社長のリーダーシップ : 他人に任せられない経営者機能

概要

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リーダーシップとは,人々をリーダーの考える1つの方向にひっぱっていく影響力をいう。リーダーがリーダーシップを発揮するには,リーダーとフォロアーの間に安定した信頼関係がなければならない。しかし現在の情報化時代,IT・資本主義時代には,最も変化のはげしいカネ,情報が経済社会を大きく動かしている。従来のような安定した無意識の価値観,制度・法律の影響力は急減している。従ってリーダーシップの前提となる信頼関係が薄らぎはじめ,安定したリーダーシップの発揮が難しくなっている。社長のリーダーシップの出発点は,まず社長の哲学である。それを内省しつづけることによって,宗教的覚醒が生まれ,社会への貢献が意識され,「共通善」の考えが生まれてくる。しかし一方,社長がリードする企業組織は,その目的として長期の維持発展をかかげ,経済効率の向上に力を入れる。そこで「共通善」の方向を考える社長とは,どうしてもコンフリクトを起こしやすい。そのコンフリクトの1つが企業倫理問題である。それは多くの場合,企業の活性化,企業成長によってある程度解決される。社長がどうしてもリーダーシップをとらなければならない局面は「ゴー」という前向きの方向ではなく,撤退の局面である。役員やサブ・リーダーは,撤退を口にすることは自らのいままでのレゾンデートルを否定することになりかねない。日本の第二次大戦終結も,結局は最高トップ・リーダーの天皇が言い出さなければならなかった。トップの人事も社長も専決事項である。他人には任せられない。日本企業のサブ・リーダーたる役員の中心的経営機能は,執行管理である場合が多い。そして多くは財務的バランス感覚のある人が,そのポジションにつく。しかしそのポジションにつく最も重要な要件は,その役員の財務的実務能力よりも,その人の人柄,人間的魅力である。それによってまわりの人々に,いかに支持されるかがきまる。
慶應義塾大学の論文
2000-04-25

著者

清水龍瑩
慶應義塾大学商学部

社長のリーダーシップ : 他人に任せられない経営者機能

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