一般演題 35 テロメア不安定化による染色体異常生成とその生物学的意義
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概要
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最近,放射線生物学の領域で,いくつか低線量放射線の生物影響を評価するために重要ないくつかの知見が報告された. その一つは,早田らのグループの報告で,中国の南部広東省にある自然放射線レベルが高い地域(HBRA)に住む住民の血液細胞における染色体異常を染色体ペインティング法で解析したものであるが,HBRAと対照地域に住む住民の安定型染色体異常頻度には差が認められないが,不安定型の二動原体染色体頻度は,HBRAの住人で線量依存的に増加するのに反して,対照地域の住民の場合にはそうならないと報告している. この一連の発見は,放射線照射された細胞において見られる染色体異常は,(1)安定型と不安定型がほぼ同じ頻度で生ずるとともに (2)不安定型染色体の大半が二動原体染色体でフラグメントを伴わないというこれまでの放射線生物学の常識に矛盾するものである. この矛盾した現象が何故生ずるかは,明らかではなっかたが,最近,我々は,この現象が放射線による遺伝的不安定性の結果生ずる染色体異常の出現現象と極めて良く一致する現象であることを発見した. すなわち,X線照射したヒト細胞で照射後14〜50細胞分裂を経た細胞で遅延的に出現する染色体異常は,90%以上が二動原体染色体で,かつその二動原体はフラグメントを伴わない. これらの一連の結果は,低線量放射線の慢性被ばくは,細胞に遺伝的不安定性を誘導し,遅延型影響を発現することを示唆する. なぜ,フラグメントを伴わない二動原体染色体が生ずるのか?その機構は,不明である. そこで,本研究では,放射線で生じたDNA二重鎖切断の修復に伴って,テロメアの構造不安定化が生じ染色体末端の直接融合が促進されるのではないかと予想しその仮説の是非を検証した.
著者
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児玉 靖司
大阪府立大・先端研
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渡邉 正己
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線生物学
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児玉 靖司
大阪府立大学産学官連携機構先端科学イノベーションセンター放射線生命科学研究室
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渡邉 正己
粒子線生物・原子炉・京都大
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渡邉 正己
長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科放射線生物学研究室
-
渡邉 正己
長崎大学 薬学部
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漆原 あゆみ
日本原子力研究所
-
児玉 靖司[他]
大阪府立大学先端科学研究所
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