林業経営における税制問題の研究 : 特に相続税に関して
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概要
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本報告は近年国内林業を取り巻く厳しい状況の中において,木材の供給源である個別林家の税制にかかわる問題についての分析検討である。林業経営維持上の大きな支障と考えられる相続税問題に対する経営者の意識やこの問題の山林経営に及ぼす影響力を規定する要因とその傾向は次のようになる。(a)市街地の地価高騰にあおりをうける都市近郊林の方が問題が顕著になる。(b)所有山林の面積規模が大きいほど相続による影響は大きい。(c)人工林率の高い林家ほど問題意識は強い。(d)山林の節級構成が幼・若齢に偏しているほど資源構造の悪化が著しい。(e)高齢林が多いほど納税資金の調達が容易である。(f)あらかじめ生前贈与を計画的に行っている林家ほど税負担の期間的分散が可能である。(g)山林以外に換価能力の高い財産を所有しているほど山林経営の安定は確保される。実際には個別の林家により山林以外の財産や相続人数,配偶者の有無など事情が異なるため,課税状況や税負担への対応も一様性は乏しい。このため今後,林家が組織的にこの問題に取り組むこと及び個々の経営段階での相続に対する計画的な準備体制を整えることが不可欠であると思われる。また税負担によって生ずる乱伐による森林資源の崩壊は国民的な「緑の損失」にもつながるため,社会的にこの問題に対する広い理解を得ることが必要である。そしてこれを前提とし,林業生産の特質(生産期間の超長期性等)を的確にとらえた税制を確立することを検討すべきである。
- 1988-12-25
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