<研究資料>学生スポーツの変容に関する研究 : 九州地区大学体育大会を中心に
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概要
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以上, 九州地区大学体育大会の第1回大会から第40回大会までの推移とその背景や参加学生の意識の変化及び大会の抱える問題について, 過去に行われた調査資料や九州地区大学体育協議会関係の資料を用いて考察してきた。その結果, 明らかになった点を要約すると以下のようになる。1. まず指摘できることは, 体育大会は草創斯, 発展期, 変動斯及び安定期と推移してきたが, その過程において次第に大規模化してきたということである。実施種目数や参加学生数, 大会予算の推移からみて, その規模は大会開始後25年目以降すなわち昭和50年代の変動期においてそのピークに達し, 現在に至っている。特に参加学生数は, わが国の大学生の増加に伴ってこれに対応する形で増えてきており, 本大会の規模が社会の変化に影響されてきたことが明らかになった。2. 大会に参加するにあたっての学生の態度については, 真の学生スポーツに徹するというスポーツマンシップを強調する学生が減少し, 代わって勝利の感激を味わいたいという試合での勝利を強調する学生が増加してきている。勝利を強調する学生が多いという傾向は, 昭和40年代以降みられ, したがってかなり以前からそうした傾向にあったということができる。3. 大会参加の効果に関しては, 課外活動の活発化や体力の向上, 技術の向上に役立つことは, いつの時期でも多くの学生が認めている。変化がみられるのは, レクリエーションや母校の代表意識を強化するのに役立つということを認める学生が減少し, 代わって勝利の感激を味わうのに役立つということを認める学生が増加してきたことである。すなわち, 大会が競技志向, 勝利志向の傾向を強めてきているといってよい。4. 大会は, 大学体育の使命達成あるいは学生体育の普及発展という目的はある程度達したものとみてよい。しかしながら, 重要な目的の1つとされている学生相互の親睦に関しては, 初期の頃に比べると現在はあまり達成されているとはいいがたい。これは, 大会の規模が巨大化し過ぎたための必然的帰結であり, 本大会が現在抱える基本的かつ最大の問題である。この問題を簡決するための方法は, ポジティブな取り組みとしては親睦行事を実施したり, 親睦目的が達せられるような運営の仕方をすることであり, ネガティブな取り組みとしては規約を改正して大会の性格づけをし直すことである。体育大会の目的や在り方は, 社会の変化や学生のスポーツ意識, スポーツとのかかわり方の多様化とともに当然変わってきてよい。最後に, 本大会が抱える問題の解決と望ましい在り方をめぐって, 関係者の一層の努力を期待するものである。(本研究は, 第40回九州体育学会にて発表したものである。)
- 1993-02-15
著者
-
金崎 良三
Institute of Health Science, Kyushu University
-
山本 教人
Institute of Health Science, Kyushu University
-
山本 教人
九州大学健康科学センター
-
金崎 良三
Institute of Health Science, Kyushu
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