<原著>大学体育大会参加者の運動部参加の動機
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概要
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九州地区大学体育大会参加者を対象に, 彼らの運動部への継続的参加の動機が何であるのかを明らかにし, さまざまな観点からその比較を行った。調査の対象となったのは, 第40回九州地区大学体育大会に参加した運動部所属の学生1,837名であった。本研究で用いた質問紙の項目は25項目であり, それらは大学生の運動部参加に関連のある, 「回避」, 「達成」, 「健康・体力」, 「親和」, 「自由・平等性」, 「固執」, 「社会的有用性」の7つの動機を構成していた。1) 各動機の重要度に関しては, 全体的にみれば, 「健康・体力」動機, 「親和」動機, 「固執」動機が重要であった。このことは, 体育大会参加者の運動部への継続的参加の理由として, スポーツのもつ手段的な価値が重要であること意味しているものと思われた。「回避」動機に対する回答は否定的なものであり, やめられないから部活動を続けているのだとする理由は優位にはなり得ないということであった。2) 次にさまざまな観点から参加動機の比較を行った。,学年別の比較では, 「社会的有用性」動機の得点が高学年よりも低学年において高かった。大学種別の比較では, 「社会的有用性」, 「健康・体力」, 「自由・平等性」の各動機の影響が短大生において最も強く, 短大生にとっては部活動継続の理由として, スポーツのもつ手段的な価値がより重要であると判断された。専攻別の比較では, 「自由・平等性」動機の影響が体育系学部・学科において最も弱かった。これは部内における不平等な人間関係の反映であるように思われた。地位別の比較では, 有意差の生じた「達成」, 「親和」, 「固執」, 「自由・平等性」の各動機の内, 「固執」動機を除くすべての動機の影響はレギュラーにおいて最も強く, 一般部員において最も弱かった。このことは, 試合に出場できるか否かが, 彼らの達成意欲やチーム内外での友人関係, さらにチームの雰囲気の善し悪しの判断に影響を及ぼしていることの反映であると推察された。役割別の参加動機の比較では, 「達成」動機の影響が主将において最も強く, 主将がチームの達成に重要な責任を負わされていることと関連がありそうであった。スポーツ継続の意図と参加動機の関係を検証した結果, 「社会的有用性」動機を除くすべての動機で有意差が生じたが, 「回避」動機以外のすべての動機の影響はスポーツ継続の意図をもつ群において強く, 「回避」動機の影響は, スポーツ継続の意図をもたない群において最も強かった。このことは, スポーツ継続の意図をもつ群が, 現在の運動部参加の重要な理由として, スポーツ的達成やその他スポーツにまつわる二次的な価値を重視しているのに反し, スポーツ継続の意図をもたない群は, やめたくてもやめられないということを運動部奉加の主要な理由としているということであると判断された。
- 1992-02-08
著者
-
金崎 良三
Institute of Health Science, Kyushu University
-
山本 教人
Institute of Health Science, Kyushu University
-
山本 教人
九州大学健康科学センター
-
南 貞己
Kagoshima University
-
金崎 良三
Institute of Health Science, Kyushu
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