花粉膜の表面微細構造によるツガ及びカナダツガの類別について(林学部門)
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概要
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この報告は, 花粉膜の表面微細構造によるツガ及びカナダツガの類別について述べるものである。供試料は, Micropeuce (Eutsuga)に属するツガ及びカナダツガの2種である。実験方法は, 筆者が1956年来適用しているMethylmethacrylate carbon 2段replica法によつた。実験の結果, 下記の諸点を明らかにすることができた。1.ツガ花粉 : cap及びgerm furrowの表面は不規則に配列した隆状突起によつておおわれ, さらにそれより大きさの異なつた指状物が突出し, その間にごく小数ながらイボ状物の存在が認められる。とくに指状突起物は軟弱なためか, 曲りやすく, しかもほとんどはく離しない。一方, marginal ridgeとgerm furrowの連結部の膜面は, 微小なしかも不規則な突起物によつておおわれている。これはcap及びgerm furrowの表面と全く異なつた構造を呈している。また, Photo. 3に示した如く, germ furrowの中央部にnarbeの存在を確認することができた。narbeの表面は, へいかつである。指状突起物の長さは約0.3∿2.1μ, 連結部膜面の突起物の長さは約0.1∿0.2μ, またnarbeは長径約7.5μである。2.カナダツガ花粉 : capの表面は花野菜型の隆起でおおわれ, その表面には微小な刺状突起をそなえている。またgerm furrowの表面には, 大きさの異なつた粒状隆起が存在し, さらにその表面には微小な刺状紋を有しており, 粒状隆起の間には不定形の隆起が認められた。capとgerm furrowの連結部の模面構造はツガ花粉と同様である。Photo. 6に示したように, ツガにみられたnarbeが見出しえられなかつた花野菜型隆起部上の刺状紋の長さは約0.1μであり, 粒状突起物の直径は約2.4∿2.0μで, またその表面に存在する刺状紋の長さは約0.1μである。以上述べた諸点で明らかなように, ツガ及びカナダツガ花粉の微細構造は, いちじるしく異なつている。なおPhoto. 7に示したイボ状構造は, ectosexineより下の層の表面構造である。筆者は, ツガ花粉のsexineは3つの異なつた表面構造をもつ層から成り立つているのであろうということを推定した。
- 京都府立大学の論文
- 1960-09-01
著者
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