ハトムギの抗腫瘍ならびに抗炎症作用に関する検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ハトムギ [Coix lachryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf] の子実は,これまで伝統薬として,中国や日本で古くから利用され,抗腫瘍,抗肥満,抗糖尿など様々な機能を持つことが報告されている.われわれは以前よりハトムギの渋皮,薄皮,外殻の生物作用に着目してきた.今回,従来より漢方などで使われてきたハトムギの子実の熱水抽出エキス(ヨクイニン)を比較対象として,子実,渋皮,薄皮,外殻のすべての部分を含む熱水抽出エキス (CRD),ハトムギの有用成分である Monoolein と Trilinolein の抗腫瘍,抗炎症作用を検討した.ヒト由来癌細胞に対する細胞増殖抑制作用については,乳癌細胞 (MCF-7),肺癌細胞 (A-549),喉頭癌細胞 (Hep-2) を用いて評価した.結果は両エキス,Monoolein, Trilinolein ともに各癌細胞に対して弱い増殖抑制効果を認め,その作用はヨクイニンよりも CRD, Monoolein, Trilinolein の方がより強かった.また,発癌予防作用については,ヒトリンパ腫由来の Raji 細胞と発癌プロモーターである TPA (12-O-Tetradecanoylphorbol-13-acetete) を用いて,特異抗原発現能により評価した.結果は両エキス,Monoolein, Trilinolein ともに特異抗原発現を減少させた.また,ヨクイニンより CRD, Monoolein, Trilinolein がより強く発現を抑制した.一方,Monoolein は Trilinolein よりも強く抑制した.次に,ハトムギの抗炎症作用を検討するために,マウス皮膚上皮由来正常細胞に被検物質を作用させ,紫外線 (UVB) 照射前後ならびに加熱障害前後の細胞形態変化により評価した.結果は UVB 照射前後にかかわらずヨクイニンよりも CRD, Monoolein, Trilinolein が有意に細胞障害を抑制した.また,加熱障害前後については,ヨクイニンの方が CRD より細胞障害を抑制し,Monoolein は Trilinolein より有意に細胞障害を抑制した.以上のことから,子実以外にも渋皮,薄皮,外殻が有用であることが示唆された.さらに,Monoolein と Trilinolein は抗腫瘍,抗炎症を有することが示された.
著者
-
鈴木 信孝
金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座
-
大竹 茂樹
金沢大学医学部保健学科
-
鈴木 信孝
金沢大学大学院医学系研究科
-
徳田 春邦
金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座
-
大竹 茂樹
金沢大学医薬保健研究域保健学系病態検査学講座
-
鈴木 里芳
金沢大学大学院医学系研究科 臨床研究開発補完代替医療学講座
-
太田 富久
金沢大学医薬保健学総合研究科環境健康科学講座
-
川端 豊慈樹
金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座
-
鈴木 里芳
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻
-
許 鳳浩
金沢大学大学院医学系研究科臨床研究開発補完代替医療学講座
-
UEBABA Kazuo
帝京平成大学東洋医学研究所
関連論文
- 視覚経路以外の光の脳への直接的作用と、それが免疫に及ぼす効果についての検討
- ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)による血管内皮細胞上の組織因子, トロンボモジュリンの調節
- コラーゲン含有飲料摂取による顔面皮膚性状の変化
- 放射線療法と rituximab 単剤療法が奏効した膀胱原発 mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫
- ハトムギ熱水抽出物の変異原性試験 : ―復帰変異試験,マウスリンフォーマ試験 (MLA),マウス小核試験―
- キウイ果汁エキス食品の高齢者における便通促進と QOL 増進効果 : ―効果と安全性についての探索的検討―
- Letter to the Editor イベント・リポート 第3回『大学は美味しい!!』フェア開催--31大学から安全性・機能性にこだわった産学連携食品300種が出品
- 異なる疾患群におけるIgG型抗プロトロンビン抗体測定キット2社間の測定値の乖離
- 頭頸部悪性リンパ腫の診断
- 高齢になってから診断された先天性プレカリクレイン欠乏症の1症例
- 血管内皮細胞における凝固線溶制御因子の発現に与えるHMG-CoA還元酵素阻害剤の影響
- メルファラン投与後, myeloid/natural killer cell acute leukemiaと考えられる二次性白血病を合併した多発性骨髄腫
- 非血縁者同種骨髄移植における慢性GVHD : 血縁者間同種骨髄移植との比較
- 特定保健用食品「食後の血糖値の上昇を緩やかにする」表示をした食品について
- 再発性および治療抵抗性非Hodgkinリンパ腫に対するMMIP療法
- 組織型プラスミノゲン・アクチベータ(t-PA),ウロキナーゼ型プラスミノゲン・アクチベータ(u-PA) (広範囲 血液・尿化学検査 免疫学的検査(第7版・2)その数値をどう読むか) -- (血液凝固・線溶系検査)
- 卵巣摘出ラットのストレス誘発性認知障害に対するラロキシフェンの効果
- 184 スクワランオイルの産褥期における乳頭・乳輪保護作用に関する有効性の検討(乳房管理、母乳4, 第46回 日本母性衛生学会総会 学術集会抄録集)
- 33-31.ホルモン補充療法に抵抗を示す鬱症状,不安症状に対する温経湯併用療法の有効性の検討(第167群 思春期・更年期・老年期9)(一般演題)
- 塗抹乾燥標本およびBromodeoxyuridineを用いたin vivoにおけるヒト白血病細胞動態の解析
- 白血病細胞におけるP糖蛋白による多剤耐性の検討
- 急性非リンパ性白血病の初診時のP糖蛋白発現の竟義
- 303.各種抗腫瘍剤によるHL-60細胞の死について : 血液・リンパII
- 219. 白血病細胞の死に関する検討(リンパ・血液IV)
- ハトムギ熱水抽出物のラット 28 日間反復経口投与毒性試験
- ハトムギ熱水抽出物のラット急性毒性試験
- サプリメントの臨床医学への応用
- アスタキサンチン含有ソフトカプセル食品の肩血流量及び肩凝りに対する影響 : ―パイロット試験―
- 特定保健用食品「血圧が高めの方に適する」表示をした食品について
- 特定保健用食品「食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい」表示をした食品について
- 10) 産婦人科領域での補完代替医療(クリニカルレクチャーシリーズ,生涯研修プログラム,第59回日本産科婦人科学会生涯研修プログラム・卒後研修プログラム,研修コーナー)
- 更年期障害とサプリメント : 利点と注意点について
- 健常喫煙者における抗酸化天然成分によるパイロット試験:DNA 酸化傷害抑制効果の検討
- 急性白血病FAB分類の問題点 : 特にリンパ球系白血病細胞と骨髄系白血病細胞の鑑別について
- 各種抗腫瘍剤によるエールリッヒ腹水がん細胞の形態変化と細胞動態について
- 227. 免疫細胞化学法の細胞診への応用 : 血液塗抹乾燥標本における細胞表面抗原の検索(第47群 : 総合(その他), 示説, 第23回日本臨床細胞学会秋季大会記事)
- 17.B cell specific mitogenによる人末梢血リンパ球の形態学的変化(第5群:血液〔II〕, 一般講演および示説, 第23回日本臨床細胞学会総会)
- プラスミノゲン(Plg),プラスミン(Pln) (広範囲 血液・尿化学検査 免疫学的検査(第7版・2)その数値をどう読むか) -- (血液凝固・線溶系検査)
- 急性骨髄性白血病の寛解後療法 (特集 臨床血液学--新たなエヴィデンスの実践に向けて) -- (診療の実際)
- 急性白血病 急性骨髄性白血病の治療 急性骨髄性白血病治療の最適化研究 (造血器腫瘍--基礎・臨床領域における最新の研究動向) -- (臨床編 治療の実際)
- 変異型第XI因子F221Sの機能解析
- 成人急性骨髄性白血病の治療戦略--予後分類による治療法の選択 (第1土曜特集 造血器腫瘍のあらたな治療戦略) -- (造血器腫瘍の治療戦略)
- インターネット入門
- 先天性第X因子欠損症の遺伝子解析、および変異タンパクG114RとG223Vの機能解析
- ハーブティーの QOL 増進効果 : ―睡眠の質に関するパイロットスタディ―
- 新規サプリメントと医薬品の相互作用を予見する
- 269 胸水中に骨髄腫細胞の出現を認め骨硬化像を伴った非分泌型gA多発性骨髄腫の一例
- ヨーガ(再結合)の意味 : ヨーガの行による免疫の変化からの考察
- ヒアルロニダーゼ,コラゲナーゼ,チロシナーゼ,ウレアーゼ阻害活性を有する機能性食品素材や薬用化粧品の活性成分としてのアカギの有用性について
- 代替医療の国内外での現状と将来(第37回 日本心身医学会近畿地方会演題抄録)
- 職場における栄養補助食品の活用と留意点
- Macで簡単、メールサーバの導入(事例3 Macintosh編)
- 特定保健用食品の許認可について
- 補完代替医療とリハビリテーション(第42回日本リハビリテーション医学会学術集会)
- 研究用インターネット環境の整備
- 悪性腫瘍患者におけるタベブイア・アベラネダエ(タヒボ)の長期摂取における臨床安全性試験
- ガゴメ昆布 (Kjellmaniella crassifolia) 由来フコイダンの遺伝毒性試験による安全性の評価
- ガゴメ昆布フコイダンの健常成人における安全性
- AML寛解導入におけるイダルビシンとダウノルビシンの比較(JALSG AML201)
- アントラサイクリンの用量と成人AMLの治療成績
- 伝統薬に光 : アメリカで進む植物性医薬品 (Botanical Drug) について
- 成人AMLに対する寛解導入における標準量イダルビシンと高用量ダウノルビシンの比較 : JALSG AML201 Study (特集 血液腫瘍に対する重要な臨床試験の意義と診療・研究へのインパクト)
- 急性骨髄性白血病の化学療法 (造血器腫瘍学 : 基礎と臨床の最新研究動向) -- (骨髄系腫瘍の臨床)
- 高年齢者におけるガゴメ昆布フコイダンの安全性ならびに免疫機能への効果
- ガゴメ昆布フコイダンときのこテルペンエキスの安全性評価:ラット薬物代謝酵素への影響
- ウサギ脳由来組織トロンボプラスチンを用いた第VII因子活性測定で著しい低値を示した凝固第VII因子異常症 (FVII Padua)
- 秘匿関数計算システムによる医療データのプライバシ保護統計分析(セキュリティ,ライフログ活用技術,オフィスインフォメーションシステム,ライフインテリジェンス,一般)
- AMLの治療
- ハトムギ Coix lachryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf の有用成分に関する研究
- 体外受精反復不成功の妊娠・出産例:L-カルニチン含有食品の有用性に関する一考察
- ハトムギの抗腫瘍ならびに抗炎症作用に関する検討
- ヒトにおけるフコイダンおよびキノコ菌糸体含有食品の安全性と有用性に関する検討