乳臼歯の早期抜去が後継小臼歯の萌出時期に及ぼす影響

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高度齲蝕乳臼歯の早期抜去が後継小臼歯の萌出にどのように影響をもたらしたかを検討した。 研究資料は無歯科医地区の学童を対象とした歯科保健計画により蓄積された記録である。歯科保健計画は歯科検診で検出された高度齲蝕乳歯の抜去と初期齲蝕永久歯の充填を行なうものであった。なお乳歯抜去時の年齢は6〜7歳が主で, 一部が8歳であった。 対象とした被検者は1972年度〜1974年度の新入生 (6歳児) で男子80名, 女子91名の合計171名であった。 後継小臼歯萌出の有無については年1回, 12カ月間隔で歯科検診を実施したが, その観察期間は4〜6年であった。小臼歯の萌出は歯冠の一部でも出齲していれば萌出歯とみなした。 乳臼歯抜去が後継永久歯の萌出に与える影響を評価するため, 後継小臼歯の萌出時期を各歯種別, 性別に先行乳臼歯の抜去群と非抜去群に分けて比較検討した。 すなわち, 各群別, 歯種別, 性別に累積度数図 (図1〜図8) を描き, また推定萌出時期の中央値を算出した (表2)。 その結果, 上顎の後継小臼歯の揚合は先行乳臼歯抜去の影響が明瞭であるのに対し, 下顎小臼歯にはほとんど影響しなかった。すなわち抜去群の上顎小臼歯の萌出時期の中央値は1〜2年非抜去群より早かった。しかし下顎小臼歯では全く同じか, やや遅れるという所見が示された。 さらに乳臼歯抜去の時期と後継小臼歯萌出時期との間の相互関係を検討するため, 各歯種別, 性別に相関係数を算出したが, 統計学的に有意な相関関係は認められなかった (表4)。 以上の所見から, 高度齲蝕乳臼歯の6〜7歳時抜去は上顎の後継小臼歯には萌出促進に作用するが, 下顎小臼歯に対しては影響がないことが明瞭であった。
有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文

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