醤油火入おりの凝集沈降に関する物理化学的解析

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火入工程中に生成される混濁物質(火入おり)の物理化学的性質(密度,粒度分布,蛋白質の分子量分布)と凝集沈降の関係について検討し,次の結果を得た. (1) コールターカウンター法で工場の火入タンク中の火入おりの粒度分布を測定した結果,沈降しやすい火入おりほど0.79〜1.26μmの最小の粒子の割合が少なく2.0〜5.04μmの粒子が多くなる傾向を示した.メンブレンフィルター法による測定結果もコールターカウンター法の結果とほぼ一致した. (2) 火入タンクに沈殿している火入おりの密度分布のピークは1.26g/cm3にあり,沈降しやすい火入おりほど,密度1.26のピークが増大した.一方,浮遊している火入おりの密度は沈殿している火入おりより低い値を示し,密度1.245と1.19にピークが認められた. (3) SDS, 2-メルカプトエタノールで可溶化した火入おりの構成蛋白質はTSK G 3000 SWにより,分子量300,000以上, 50,000, 35,000, 16,000の4つのピークに分離されたが,沈降しやすい火入おりほど比較的高分子量の蛋白質が増加する傾向を示した.この傾向はSDS-ポリアクリルアミド電気泳動のパターンからも確認された. (4) 火入工程中,火入おりの粒子は最初5.04〜12.7μmの大きな粒子が主成分であったが放置時間の経過とともに,いったん最小の0.79〜1.26μmの粒子に崩壊し,その後再び凝集し最終的に2.0〜5.04μmの粒子に成長した.一方,火入おりの密度は火入後放置時間の経過に従って,密度1.26のピークが増大した.また,火入おりの構成蛋白質は,火入工程中,次第に低分子化した. (5) 以上のように火入おりの沈降には,おり粒子の密度の増大,凝集による粒子径の増大の寄与が大きいことが判明した.さらに,火入工程中,火入おりは密度,粒子径を増大させ,次第に沈降性が賦賦されることが明らかにされた.一方,火入おりの構成蛋白質の分子量の変化は直接その沈降性と関連は認められなかった.
社団法人日本農芸化学会の論文

醤油火入おりの凝集沈降に関する物理化学的解析

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