金属阻害による醤油酵母の分別計数法
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概要
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醤油諸味中の酵母の動態を調査するため,諸味中の主要な酵母であるSaccharomyces群とTorulopsis群の2群を分別計数する方法について検討し,次の結果を得た. (1) Li+とZn2+の2金属を培地に添加した場合,Saccharomycesのみの生育を完全に阻害し,Torulo-psis群を主とする他の酵母は十分に生育することを認めた. (2) 分別条件を検討した結果,Li+はその適量の添加によって,酵母の生育可能なあらゆる食塩濃度とpHにおいても両群を分別でき,一方,Zn2+が分別性を示すには2M以上の高濃度食塩が必須であり,PHも4.5以上に限定されることを認めた.また,培養には30°C〜33°Cが適温であった. (3) これらの金属塩を培地に添加することにより,醤油諸味中のSaccharomyces群とTorulopsis群の分別が可能になつた.すなわち,金属塩添加培地にはTorulopsasを主とする酵母群のみ生育でき,無添加培地の全酵母数より添加培地の酵母数を差し引くことにより,Saccharomyces群を計数することができた. (4) LiCl,ZnCl2添加による分別性を醤油諸味について検討したところ,釣菌による酵母の硝酸塩同化性から,Zn培地がLi培地より,分別性に優れていた. (5) Zn培地による分別法により,醤油諸味中の酵母動態を調査した結果,Saccharomyces群は発酵期のみ生菌数の過半数以上を占めること,Torulopsis群は仕込初期から発酵期にかけて生育し,さらに熟成期にも生育し,2度活動することなどを認めた. (6) 以上のごとく,Zn培地による分別法は分別性や判別日数,操作の簡便さの点で優れ,実用面で十分活用できることが明らかとなった.
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