カキの脱渋および貯蔵に関する研究 (第6報) : 温湯脱渋果における渋味の再現について
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概要
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1) 温湯脱渋した未熟な平核無を煮沸すると再び渋くなり, 150分後に脱渋前の可溶性タンニン物質の約55%が可溶化した。2) 脱渋果の果肉をミキサーで破壊し, 水を流しながら0.350mmと0.177mmの分析篩で篩うと凝固したタンニン細胞の内容が集められた。この凝固物を顕微鏡でみると, 温湯脱渋ではタンニン細胞内において, タンニン物質のみが不溶性化したり沈殿したりするのではなくて, 細胞内容全体がゲル化し, 凝固していることがさらに明らかになつた。そして, 凝固物は冷水, メチルアルコール, エチルアルコール, エーテル, アセトン, ホルムアミドなどには不溶であつたが稀塩酸, メチルアルコール性塩酸, エチルアルコール性塩酸には溶解した。3) 温湯脱渋した果実の果肉を1%メチルアルコール性塩酸で処理し, タンニン物質を抽出したとろ, 未脱渋果に処理したものと同じほどのタンニン物質が抽出できた。そして, その抽出液は未脱渋果のそれと同じように非常に渋かつた。4) 温湯脱渋によつて凝固したタンニン細胞の内容に熱水を加えたところ, 上澄み液に渋味があらわれ, 100°Cではメチルアルコール性塩酸に溶解したタンニン物質の90%以上が可溶化した。5) 温湯脱渋によつて凝固したタンニン細胞の内容に水を加え超音波を作用させたところ, 凝固物が破壊され溶液が渋くなり, 15分間で約40%のタンニン物質が可溶化した。6) 以上の結果より考えると, 温湯脱渋においてはタンニン物質が縮合, 重合のような強い化学的変化をして脱渋するのではなく, タンニン細胞の内容がゲル化して全体が凝固するためでないかと思われる。
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