イチゴ果実の成熟におよぼす果実中の内生サイトカイニンの影響
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概要
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この実験はイチゴ果実中のサイトカイニン活性の分布と果実発育に伴うサイトカイニン活性の変化を調べ, 果実発育における種子 (そう果) の役割を明らかにする目的で行われた.1. イチゴ果実のメタノール抽出物を酢酸エチルで分画し, えられた水層および酢酸エチル層のいずれにおいても認められた. 水層のアンモニア溶出分画のペーパー•クロマトグラフィーを行なった場合, Rf 0.2-0.3およびRf 0.6-0.8の2個所にサイトカイニン活性が認められた. 一方, 酢酸エチル層のカラム•クロマトグラフィを行った場合, 酢酸エチル90%, メタノール10%を含む溶出番号9の混合溶液を処理した場合に得られた分画にサイトカイニン活性が認められた.2. イチゴ果実中のサイトカイニン活性の大部分は種子に含まれていた.3. 20°Cで発育したイチゴ果実は, 開花15日目より急速に発育し27日目に成熟した. イチゴ果実中のサイトカイニン活性は, 開花10-15日目に最高となりその後発育に伴い徐々に低下した. 種子の発育についてみると, 開花10-15日目でははい珠内はほぼはい乳で占められ未熟の状態であったが, 25日目でははいで占められ完熟の状態であった.4. 20°Cで発育したイチゴ果実は, 30°Cの果実よりも成熟が遅れた. 開花15日目の果実中のサイトカイニン活性は, 30°Cの果実より20°Cの果実で高かった. この時期の20°Cの果実の種子の発育は, 30°Cの果実の種子より遅れており未熟の状態であった.以上より, 主に種子で生成されるイチゴ果実中のサイトカイニンは種子が未熟の時に活発に生成されるため,より低温下で発育した果実では, 種子の発育が遅いため, 活発なサイトカイニン生成が長く続き, 果実の成熟が抑制されるものと考えられる.
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