ウイルスフリー•ユリ球根の in vitro における増殖
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概要
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テッポウユリ, カノコユリを中心に数種類のユリについて, 茎端部組織の培養によって得られた無菌幼植物の子球りん片, 葉あるいは茎節を培養材料として, 肥大した子球を in vitro で効率良く増殖できる培養条件を明らかにするとともに, 無菌的に増殖した小球根の鉢上げ後の生育やウイルス保毒の状態についても調査した.1. オーキシン, 特に0.1mg/lの濃度のNAAは培養切片からの子球分化および子球の生育•肥大を促進した. サイトカイニンは子球原基 (不定芽) の分化を著しく促進したが, その子球への発達に対しては抑制効果を示すことがわかった.2. りん片を分割•切断して培養することによって,1りん片当たりに得られる子球の総数が増加した.3. 高いしょ糖濃度 (60〜120g/l) あるいは比較的高い温度条件 (27〜28°C) で培養された子球では, 葉の伸長が抑制されたが, 子球自体の生育•肥大は促進された.4. 培養材料として葉片あるいは茎節切片も利用できるが, 実用的にはりん片培養が最も効率良く子球を増殖できる方法であることがわかった.5. in vitro で増殖した小球根の鉢栽培試験において, テッポウユリの培養球根は, 鉢上げ後速やかに出葉し旺盛に生育することによって, 1作で切り花生産用として販売可能な球根を養成できることがわかった. カノコユリの培養球根では, 鉢上げ前の低温処理により抽台が誘導されて葉数が増加した結果, 球根の生育•肥大も速められ, 開花球根を得るまでの球根養成期間を短縮できた. シンテッポウユリとトサヒメユリの場合, 鉢上げ後, 短期間 (1作) で切り花を得ることが可能であり,組織培養を利用した実用的な球根あるいは切り花生産の対象として有望であることがわかった.6. 電子顕微鏡による観察およびタカサゴユリ実生苗に対する葉汁液接種による生物検定の結果, 本研究の茎端部組織の培養に由来する子球はウイルスフリーであることが示唆された.7. 本研究の結果から, 茎端部組織の培養で得られた小球のりん片を培養材料として, 無菌的に増殖を繰り返し, 短期間で多数のウイルスフリー球根を生産でき, また, これらの培う根を栽培することによって, 切り花球根の養成期間を短縮できることが明らかになった.
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