急性肝不全に対するglucagon-insulin療法に関する研究 : 4) グルカゴン負荷テストから検討した本療法の適応と有効性について

概要

論文の詳細を見る
グルカゴン・インスリン療法を急性肝不全の臨床例にこころみ,有効例を経験しているが,一方急激な悪化をきたし死に至る無効例も少なからず存在する.このように本療法にはその適応と,その有効性を検討するパラメーターが必要とおもわれ,グルカゴン負荷テストを検討した.まずD-galactosamine肝障害(500, 750, 1,000, 1,500mg/kg体重)をラットに作製し,24時間後に50μg/kg体重のグルカゴンを経静脈的に投与した.5, 10, 15, 20, 30, 60分に採血し,cAMPを測定した.その結果,肝障害の重症化にともない,負荷前のグルカゴン値は上昇し,負荷後のcAMPの反応性は低下し,1,500mg/kg体重ではほとんど反応は消失した.つぎに各種肝疾患など83例にグルカゴン10μg/kg体重を静注し,同様に経時的にcAMPを測定した.その結果,劇症肝炎では反応性は低下し,急性肝炎では高反応であった.劇症肝炎の生存例では,死亡例に比してP/B比が高く,グルカゴン負荷によるcAMPの反応性が良好であった.
社団法人日本肝臓学会の論文