バイオリアクターによる食肉副産物の発酵調味料化
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概要
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豚赤血球,豚肝臓,豚肺,チキンボーン,ビーフ•デファッティド•ティシュー(以下それぞれPRBC, PLi, PLu, CB, BDFTと略記)について,発酵調味料原料としての評価のために,成分分析を行なうと共に,これらの食肉副産物の麹による分解液を調製して,成分分析と官能評価を行なった.また,分解液の発酵については,固定化酵母を用いたバイオリアクターにより発酵期間の短縮を試みた.原料としての成分分析では,タンパク質はPRBCが32.6%で最も高く,次いでPLi 22.1%であった.アミノ酸組成では,グルタミン酸含量の最も高いPLuで723mg/gNであり,最も低いBDFTでは434mg/gNであった.また,BDFTとCBではコラーゲン含量が高いため,ハイドロキシプロリンがそれぞれ294mg/gN,202mg/gNであった.呈味性ヌクレオチドは,PRBCにGMP 19ppm, BDFTにIMP 27ppmが検出された.分解液では,総窒素量は1.12〜1.84%の範囲にあり,PLuとCBがそれぞれ1.12%,1.27%で他の分解液に比較して低い数値であった.分解液のアミノ酸分析ではすべての試験区において遊離グルタミン酸の生成量は低く,357〜409mg/100mlであり,これに対し,遊離グルタミン量は255〜325mg/100mlで高い生成量であった.これは麹菌グルタミナーゼの失活によると考えられた.呈味性ヌクレオチドは分解液のGMPが10〜97ppmで,グルタミン酸ナトリウムの旨味の増強にわずかに寄与する濃度であった.また,IMPは検出されなかった.官能評価ではPLiの分解液の呈味性が最もよく,主原料としてPLiが適していることが明らかになった.PLiを用いて分解液を調製し,Zygosaccharomyces rouxiiとCandida versatilisを固定化したバイオリアクター(以下それぞれZカラム,Cカラムと略記)ににって21日間の連続発酵を行なった.生成エタノール量の変動は,Zカラムで0.9〜2.5%,Cカラムで1.0〜2.6%の範囲であり,また,固定化担体中の酵母数は発酵21日目においても108個/mlを維持しており,安定した発酵経過であった.発酵期間の短縮については,製麹に4日間,分解液の調製に8日間,固定化した酵母の前培養に5日間要するのみで,通液開始後は1日当り,カラム体積の3分の1の量の発酵液を得ることができた.21日間の発酵液を合わせたものは,良好な呈味性を示したが,Cカラム発酵液では4-エチルグアヤコールが1.0ppm生成したにもかかわらず,原料に由来する異臭をマスキングできなかった.
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