マウス胚の凍結におけるグリセリン平衡時間の重要性

概要

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哺乳類胚の凍結保存において,胚を凍害から保護するには,添加された保護物質が胚に透過する必要があるか否かについてはいまだ明らかでない,グリセリン平衡時間および胚の発生段階が,凍結•融解マウス胚の生存性に及ぼす影響を明らかにするために本実験を行なった.種々の方法で凍結した胚を40°Cの温水中で振とうしながら急速融解し,培養によって増大した胚盤胞に発生した胚を生存胚とした.桑実胚を0°Cで種々の時間2Mグリセリンに平衡させた後,植氷せずに0°Cから直接-170〜-180°Cの液体窒素ガス内に移し,15分後に液体窒素へ浸漬した.0.1分のグリセリン平衡後,胚は凍結によって死滅したが,1分の平衡では31%の胚が生存し,5〜30分のグリセリン平衡で最高の生存性(55〜61%)がえられた.これに離して,-7°Cで植氷しその5分後に液体窒素ガス内に移して凍結すると,0.1分のグリセリン平衡後で60%の胚が生存し,5〜30分のグリセリン平衡のときに最高の生存性(73〜82%)がえられた.この場合,0.1分のグリセリン平衡を行なった胚でも0°Cでグリセリンを添加してから液体窒素ガス内へ移すまで約12分間経週しているので,この間にグリセリンが細胞内に透過した可能性がある.桑実胚を植氷せずに0°Cから直ちに-40°Cのバスに投入し10分後にさらに液体窒素へ浸漬すると,0.1分のグリセリン平衡では胚は死滅し,20〜30分のグリセリン平衡で最高の生存性(82〜84%)がえられた.2細胞胚から胚盤胞までの種々の発生段階の胚を,グリセリンの存在下で凍結した.胚を緩慢凍結法で凍結すると,グリセリンの透過性が高いといわれる8細胞胚,桑実胚および初期胚盤胞は2細胞胚,4細胞胚および胚盤胞より生存性が高く,二段階凍結法で凍結すると桑実胚と初期胚盤胞は他の発生段階の胚より生存性が高かった.これらの成績から,マウス胚を凍害から保護するには,グリセリンが胚内に透過することが必要であり,グリセリンの透過が増せば胚の生存性が高まると思われる.
社団法人日本畜産学会の論文

マウス胚の凍結におけるグリセリン平衡時間の重要性

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