国民の森林ニーズについて(1) : アンケート結果の概要
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概要
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国民の森林に対するニーズ多様化の背景や要因を探るため,山村・農村・都市の住民を対象に森林意識を問うたアンケート調査を行った。山村としてとりあげたのは群馬県上野村,六合村,川場村,勢多郡東村,水上町,埼玉県大滝村,名栗村の1町6村であり,農村は群馬県富士見村,中之条町,月夜野町,富岡市,榛名町の1市3町1村,都市については埼玉県富士見市,鴻巣市の2市を対象とした。回答者の抽出は閲覧用住民台帳を用いて,系統抽出により各区域についてそれぞれ1,000ずつ抽出した。アンケートは郵送により1997年1月に行った。有効回収数は山村:403通,農村:418通,都市:362通であった。日本国民の森林に対する関心は非常に高いことがわかった。ほとんどの人が少なくとも年に1度,多くは数回森林に出かけ親しんでいる。出かけた先ではトイレに不便を感じる人が多く,基本的な施設の不足が指摘できるので,それらの充実が望まれる。国民の森林に対するニーズは多様で高度である。特に水源かん養,災害防備,希少生物の保護,二酸化炭素固定などの公益的機能についてはよりいっそうの充実が求められており,それについて国民は財政支出の水準を上げるべきであると判断している。こうした公益的機能に対するニーズは非常に強いが,木材生産機能・森林レク機能などの直接的なニーズは過半数の人が「ある程度重視して欲しい」という水準であった。しかし資金面・労働面・学習面からの森林との関わり,あるいは農山村と都市との交流を森林レクのひとつと捉えるならば,過半数の人がそうした活動に「参加してもよい」と捉えており,森林レク機能に対する潜在的需要は非常に大きいと言える。木材生産機能については自給率を高めるべきとする人が8割弱にのぼるなど,否定的な意見ばかりではないのだが,木材生産が環境破壊につながるとの考えがいくつかの設問においてみられ,そうした悪いイメージの打破が必要であると思われる。山村を自然の守り手として認識している人も多く,特に農山村交流などを通して木材生産に対するイメージを新たにしていくことが効果的ではないだろうか。We conducted a questionnaire survey that asked about people's perceptions of forests, ranging from mountain village residents, rural agricultural villagers, to urban people. Our main purpose in conducting this survey was to grasp the background and primary factors for people's varied need for forests. The following villages, towns and cities were selected for the survey; Ueno village, Kuni village, Kawaba village, Azuma village (in Seta county), Minakami town, in Gumma prefecture, and Ohtaki village and Naguri village in Saitama pref. as mountain villages; Fujimi village, Nakanojo town, Tsukiyono town, Tomioka city and Haruna town in Gumma pref. as rural agricultural villages; Fujimi city and Kounosu city in Saitama pref. as urban cities. We selected each sample of 1,000 by a systematic sampling method using residents'cards and conducted the survey on January in 1997 by mail. The reply rate was for 40.3% the mountain villages, 41.8% in the rural agricultural villages and 36.2% in the urban cities. Japanese people are very much interested in forests. Almost all of them pay a visit to forest at least once in a year; most of them for a few times. They feel the need for toilet facilities, indicating that still very basic facilities are lacking in Japanese forests for recreational use. Japanese people's needs for forests are varied and demanding. They want substantial increases in the environmental functions. They ask for more financial spending from governmental bodies. Their demand for the wood supplying function and forest recreational function from domestic forests, however, is not so strong. Their potential demand for forest recreation is considered to be high. Since more than half of the respondents expressed their intention to do voluntary work in the forest, to participate in financial contributions, and to study about forest. Almost 80 percent of the respondents support raising the self-sufficiency rate in wood, which apparently contradicts the weak support for the wood supplying function of domestic forests. People are reluctant to support the wood supplying function fearing that logging may destroy the environment. Policy makers should argue that forestry will benefit the environment, through the interchange of people between mountain villages and other regions.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学農学部附属演習林秩父演習林,東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻,The University Forest in Chichibu, Faculty of Agriculture, The University of Tokyo,Department of Forest Science, Graduate School of Agricultural and Life Sciences,の論文
著者
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永田 信
東京大学大学院農学生命科学研究科
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永田 信
東大院農
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安村 直樹
(独)東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林北海道演習林
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安村 直樹
東京大学北海道演習林
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安村 直樹
東京大学大学院農学生命科学研究科
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安村 直樹
東京大学演習林田無試験地
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