ソウルと東京における公園緑地関連行政組織の比較研究
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概要
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韓国と日本はどちらも東アジア型というべき経済発展を遂げており,近年,公園緑地の重要性が増してきた。両国の首都であるソウルと東京は気候等において似通った面を持ちながら,今日まで,公園緑地関連行政組織の比較研究がなされてこなかった。行政機関は公園緑地政策の主体であり,その規模が大きければ,大型事業や多様な業務の推進が容易となる反面,業務効率は低くなり,予算の浪費にもつながり兼ねないので,適当な規模の機構,人員,業務の分掌などが求められている。そこで,本研究では公園緑地組織を主管部署と関連部署に分けて,機構,業務の分掌,人員,専門職などについて両都市及びその背景として国,広域地方自治団体,区を対象に相違点や特徴を中心に比較し,考察した。さらに,その結果を基に公園緑地行政組織論を展開しながら,公園緑地行政組織の望ましいあり方と評価方法を提案した。公園緑地行政組織の規模を職員数でみると,東京都がソウル市の約3倍あり,公園緑地専門職は林業職(ソウル)と造園職(東京)と異なる。ソウル市では公園緑地主管部署が公園緑地業務とともに林政業務を担当しているが,東京都下の区の組織は区ごとに大幅に異なっている。また,東京では公園緑地に関する国の組織と役割が大きく,公園緑地専担の外郭団体とスタッフ系統の組織が発達していることも特筆に値する。公園緑地組織の望ましいあり方の主な内容は次のようである。(1)公園緑地組織の分類は,国,広域地方公共団体,基礎地方公共団体に分けて,それぞれについて主管部署と関連部署に,さらに,主管部署は本庁と出先機関に区分できる。(2)韓日の大都市における公園緑地主管部署の機構は,独立部局で4~7課が適当であると考える。(3)公園緑地専門職としては公園緑地業務に最も近い職種が求められる。(4)他の業務に支障がない限り公園緑地の公園緑地組織を統合すべきである。(5)国と地方公共団体との公園緑地の所管分掌は,公園緑地の誘致圏の行政区域の範囲を基準にすべきである。(6)迅速性が必要な重要業務については,スタッフ系統の組織の活用が求められる。(7)公園緑地行政組織は情況の変更に応じ,組織の基本枠は維持しながら,チームを中心とした可変性が求められている。(8)専門性と継続性がともに必要なポストを決めて,そのポストについては職員の長期勤務が必要である。公園緑地行政組織の評価方法としては,技能系を除外した一般系の人員で,さらに,その人員を評価するにあたって,都市公園面積をとることに提案する。すなわち,公園緑地政策分野別に評価することが望ましいが,公園緑地組織の機構と人員を分野別に算定することが困難なため,統合して都市公園を中心に評価する方法を提案する。具体的には,公園緑地都市計画組織は「職員1人当たりの都市計画区域面積」で,都市公園組織の一括評価は「職員1人当たりの都市公園面積」で評価する。さらに,公園緑地関連組織が分散されて公園緑地専管人員を分けるのが困難な場合には,「公園緑地専門職員1人当たりの都市公園面積」で評価する。This research makes a comparison of the park administrating organization systems of Seoul and Tokyo. It also evaluates the optimal sizes of park administrating organization systems and its necessary functions. The size of the park administrating organization of Tokyo Metropolitan Government is about three times that of Seoul Metropolitan Government. It is found that the kind of professionals assigned to the park administration is different. Namely, Seoul has forestry professionals, but Tokyo has landscape professionals. Seoul's administrative organizations in charge of parks are also in charge of the forest administration. Their counterparts in the ward offices of Tokyo are found in many different sections. National organizations play relatively more important roles in Tokyo. Tokyo has more affiliated associations outside of the government sector. The staff sections in park administration are well developed in Tokyo. The major findings of this study are summarized as follows. (1)It suggests that the suitable scale of park administration is 4-7 sections under an independent Bureau or Division in the large cities of Korea and Japan. (2)The professionals in such sections should be from the field most closely related to parks. (3)The unification of administrative sections related to parks should be promoted. (4)The allotment of parks administration between the national and local administrations should be made in accordance with the needs of parks users. (5)Staff organization systems should be introduced where prudence and rapidity are needed. (6)In changing circumstances, flexible subordinate organizations should be introduced within the rigid line system of the administration. (7)Where specialism and continuity on administration are needed professionals should stick to fixed posts. Park administration should mainly be evaluated on the basis of the scale of parks, main organization, and the number of park professionals. The optimal size of park organization should depend mainly on the area of the administrative district, the annual average area of park construction, and the population of the city.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻,Department of Forest Science, Graduate School of Agriculture and Agricultural Life Sciences, The University of Tokyoの論文
著者
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