屋久島における年間観光客数と観光需要特性の推計 : 離島におけるより精度の高い推計法
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概要
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観光統計(入込観光客数や観光需要特性など)は以前から公表されているが,統計としての精度は疑問視されている。本研究では,鹿児島県屋久島を対象として現在公表されている観光統計よりも精度の高い推計値を導き出すことを目的とした。具体的には,入込地点である屋久島空港,宮之浦港,安房港の3カ所において,季節変動の影響を考慮して2001年11月から2002年8月にかけて計4回のアンケート調査を実施した。この際,一定の抽出率を保つために搭乗者の5-6分の1を抽出するように工夫し,合計3,591名分の有効回答数を得た。分析の結果,屋久島を来訪する観光客数は年間20万人前後であることが推計され,鹿児島県熊毛支庁が公表している数値は過小評価されていることがわかった。また屋久島の観光需要には季節変動が見られ,春期から夏期にかけては個人客が中心であるのに対して,それ以外の時期は団体客が主体となっていた。またパック旅行客の割合が増えていることも判明し,屋久島が大衆観光地化しつつあることがわかった。さらにエコツアー・登山ガイド業も1997-2002年の間に急激に利用客数を伸ばしており,屋久島の観光業は盛隆期を迎えていたことが推察された。ただし,山岳地域・世界遺産登録地域への訪問者増加によって,繁忙期にはオーバーユースの可能性があり,環境資産の劣化が憂慮された。In Japan, official statistics on the number of tourists and characteristics of tourism demand are published, but the reliability of these statistics is said to be questionable. This paper aims to find a better way of estimating the number of tourists and characteristics of tourism demand by applying a method of sampling at a certain rate. Using such a method, a questionnaire survey was conducted to estimate tourism statistics on Yakushima Island, a part of which was included in the World Heritage List in 1993. The survey consisted of 4 five-day investigations at the ports of entry during November 2001 and August 2002, drawing a sample at a give rate. The overall sample size was 3,591. The percentage of visitors who were tourists was estimated to be between 65-69%, so the number of tourists to Yakushima Island should be around 200 thousand a year. The Kagoshima prefectural office has estimated that the percentage of visitors who were tourists should be 59-60%; therefore, it is clear that Kagoshima prefectural office underestimated the number of tourists to Yakushima Island. Also it should be noted that there was a seasonal fluctuation in tourism demand. During the off-season, most tourists joined package tours that travel agencies had planned, while most tourists in the peak season did not. Furthermore, the number of tourists who participated in ecotourism has been dramatically rising during these five years. Although an increasing number of tourists contributes to the development of the local economy, there is a possibility that overuse of mountainous areas may cause depletion of environmental assets in the near future.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻,鹿児島大学法文学部経済情報学科,Department of Forest Science, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo.,Department of Economics, Kagoshima University.の論文
著者
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永田 信
東京大学大学院農学生命科学研究科
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永田 信
東大院農
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永田 信
日本森林学会:東京大学大学院農学生命科学研究科
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坂田 裕輔
鹿児島大学法文学部
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柴崎 茂光
東京大学大学院農学生命研究科
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永田 信
東京大学大学院
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柴崎 茂光
東京大学大学院農学生命科学研究科:(現)岩手大学農学部
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