沿岸フロントと栄養塩の供給機構(シンポジウム:沿岸フロントと生物生産)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
沿岸のフロント域では植物プランクトン細胞数やクロロフィル濃度の大きな値がしばしば観測される.これは植物プランクトンの受動的な集積のみならず,植物プランクトンの活発な増殖・生産活動を示し,フロント域の大きな生物生産の基礎となっている.植物プランクトンが活発な増殖を維持するには,栄養塩類の連続的な供給が必要である.沿岸のフロントは現在,水温・塩分・密度分布などで表現される物理構造によって最も明確に定義されているが,栄養塩の供給機構の解明は必ずしも進んではいない.このため,瀬戸内海を中心とした沿岸並びに陸棚域の各種のフロントで物理構造の観測とともに栄養塩,有機物,プランクトンの分布様式などの観測結果を蓄積し,フロントで高いあるいは特徴的な一次生産が維持されるために必要な栄養塩類の供給機構を以下の5つのフロントのタイプ別に整理した.1)淡水供給のない潮汐フロント,2)淡水供給のある潮汐フロント,3)オーバーライディングによる陸棚フロント,4)陸棚湧昇による陸棚縁フロント,5)陸棚湧昇と潮汐フロントの結合型フロント.このうち5)のタイプのフロントにおける深層水中栄養塩のポンプ・アップ機構はフロントにおける新しい栄養塩供給機構を提唱するものであり,今後さらに現場検証が必要である.
- 日本海洋学会の論文
- 1995-08-31
著者
-
松田 治
広島大学大学院生物圏科学研究科
-
松田 治
広島大学生物生産学部
-
山本 民次
広島大学生物圏科学研究科
-
橋本 俊也
広島大学生物生産学部
-
山本 民次
広島大学大学院生物圏科学研究科
-
松田 治
広島大学生物圏科学研究科
関連論文
- 石炭灰造粒物を用いた沿岸底質環境改善材開発のための基礎的研究 : 栄養塩溶出試験および Skeletonema costatum の増殖試験
- 造粒石粉を用いた沿岸底質環境改善材開発のための基礎的研究 : 栄養塩溶出試験および Skeletonema costatum の増殖試験
- 人工魚礁に形成される食物連鎖を通した炭素フロー
- 微小酸素電極法および酸素フラックス法による底生微細藻光合成生産の実測(シンポジウム:浅海域生態系における底生微細藻の役割)
- 人工中層海底によるカキ養殖場沈降物量の軽減能評価 : 設置後半年間の調査から
- 広島県太田川・八幡川に設けられた貯水池前後での水質の長期変動
- 英虞湾における漁獲による窒素回収
- ボトルおよびそれらの洗浄方法の違いによる鉄コンタミネーションの検討
- 第23回沿環連ジョイントシンポジウム「水産からみた生物多様性とは何かを考える」を終えて
- 瀬戸内海福山沖海域の底質環境に関する研究