マングローブ水域の底層における水質変化とその物理的,化学的機構

概要

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沖縄県西表島のマングローブ水域が外海から孤立したときの水質のふるまいを調べた.外海とマングローブ水域の間の砂堆(Sill)が潮汐および外海波浪の作用により発達し,水域が閉鎖状態になると,底泥直上水中の溶存酸素は急速に減少し,僅か1日で無酸素状態に達した.そして,アンモニウム塩,二価鉄,リン酸塩および硫化水素の高濃度層が急速に形成された.さらに,これらの化学物質濃度は1日〜半日周期の増減を示した.これらの化学物質は底に堆積したマングローブの落葉などによる豊富な有機物が分解して,底泥直上水が無酸素状態となり,還元環境が強化されるに従って,底泥から溶出してきたものと考えられた.また,この化学物質濃度の周期的変動は,底泥上での明暗箱実験およびSill面下の地下水測定の結果,植物の光合成作用によるものではなく,外海の潮位変化に起因して,Sill面下の浸透水がマングローブ域の底泥を通し微弱であるが潮汐周期で流出入し,高濃度の底泥直上水をその上の低濃度水と混合させることにより生じると考えられた.
日本海洋学会の論文
1990-08-31