ネガティブCIモードGC/MS法を用いた農作物中残留農薬の検出
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概要
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目的 農作物中の残留農薬の一斉分析では、物性が大きく異なる種々の農薬を一度に抽出するために、農薬分析の妨害となる食品本来の成分も同時に多く抽出されることが大きな問題でる。一斉分析では多種類の農薬抽出液を、必要最小限度の簡易なクリーンアップ後、高感度かつ選択性の高い検出器による測定することが必要となる。今回著者らは農薬の検出法として、GCマスのネガティブCI(NCI)モードでの測定の適応性について検討した。NCIモードでは対象イオンを反応ガスと反応させることによって生じるイオンの中からマイナスイオンだけを検出する。対象農薬としては、マイナスイオンを生じやすい、ハロゲン原子を有する有機塩素系農薬および合成ピレスロイド農薬を選んだ。 方法 GC/MS: 日本電子製オートマスM120型, カラム: J&W DB-5(30m×内径0.25mm,膜厚0.25mm), カラム温度: 60℃(1分間)、60-160℃(40℃/分)、160-300℃(4℃/分)、300℃(5分)、カラム流量: 1.0ml/分, イオン化法: 負化学イオン化法, CI反応ガス: イソブタン, イオン化電圧: 150eV, 真空度: 4x10^<-1>Torr。食品抽出液の調整: 食品をアセトンにより抽出後ジクロロメタンに転溶した。これを抽出液としGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)に注入し、農薬画分溶出液をGC/MS用試験溶液とした。試験溶液に塩素系農薬で10-40ng/ml、ピレスロイド農薬で100ng/mlの濃度になるように添加しNCIモードのGC/MSにより農薬を検出した。試験溶液が緑色を呈した時一部農薬のGCカラムへの吸着が認められたのでフロリジルミニカラムにより色素を除去した。 結果 塩素系農薬のNCIモードにおけるマススペクトルはEIモードでのスペクトルパターンと大幅に異なったものであった。最大の特長は塩素イオンに由来すると推察されるフラグメントイオンである。図1にα-BHCのマススペクトルを示した。α-BHCの分子イオンは検出されずm/z70および35に強いイオンが検出された。m/z35はほとんどの塩素系農薬においてイオンとして検出された。ピレスロイド農薬のマススペクトルもEIモードとは異なったマスパターンであった。ペルメトリン、シフルトリン、シペルメトリンはほぼ同一のマスパターン示し、m/z80に強いフラグメントイオンが認められた。図2に示したモニターイオンによるSIM測定を行ったところ、23種の化合物の同時測定が可能であった。NCIモードにおける各農薬の検出限界は数ng/mlレベルであった。そこで試験溶液に塩素系農薬を10-40ng/mlに、またピレスロイド農薬を100ng/mlになるように添加しSIM測定を行なった。農薬添加タマネギ抽出液をNCIモードGC/MSにより測定するとタマネギに由来する夾雑ピークが認められたが、添加した農薬は良好なピークとして検出された。GC/ECD測定では妨害成分のために添加した農薬の測定は不可能であった。農薬添加レモン抽出液においても同様な結果であった。48種の食品について同様の検討をしたがどの食品においてもNCIモードでの各農薬が測定が可能であった。NCIモードにおける測定では食品成分による妨害ピークの出現は低分子領域において少なく、m/z35といった化合物非特異的なモニターでも塩素系農薬の検出が可能であった。また検出感度もEIモードGC/MS分析を上回った。従ってNCIモードGC/MS法を採用することにより、これまでの精製操作を簡略化し迅速な分析を行えることが示唆された。
- 1995-03-28
著者
-
起橋 雅浩
大阪府立公衆衛生研究所
-
尾花 裕孝
大阪府立公衆衛生研究所
-
堀 伸二郎
大阪府立公衆衛生研究所
-
Obana Hirotaka
大阪府立公衆衛生研究所
-
西宗 高弘
大阪府立公衆衛生研究所
-
西宗 高弘
大阪府公衆衛研
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