日本語教育における教師の実践的思考に関する研究(2) : 新人・ベテラン教師の授業観察時のプロトコルと観察後のレポートの比較より
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概要
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本研究は、新人・ベテラン日本語教師各10名に実際の授業をビデオで見ながら考えたことを口頭で再生してもらったプロトコルと、その直後に書いてもらった感想レポートとの比較により、日本語教師の実践的思考(教授活動に関する実践知を用いた思考)を解明する試みである。各人のプロトコルとレポートの対応や流れを質的に分析したところ、ベテランは、プロトコルで断片的に述べていたことを、レポートでは常に授業の目的を意識し、個別の項目もその場面以外の様々な事象と関連づけて検討しつつ授業全体の中に位置づけて捉え直すという「思考の文脈化」を行っていた。また、教師養成の立場からと思われるコメントも見られた。新人は、プロトコル同様、レポートでも印象に残った点の羅列的記述が多かったが、プロトコルにはあるがレポートにないコメントの内容から、必ずしも授業の中で重要度が高いものをレポートに記述したとは言えないことがわかった。一方、プロトコルにはなくレポートで出たコメントも多く見られ、授業観察後に全体を見渡して気づいた問題点や教師の立場を客観的に見たことによる気づきが記述されている。さらに、自分と異なる教授観等に対する価値判断の一時留保なども今回の分析から新たにわかった。本研究では、プロトコルとレポートを相互補完的に分析することで片方のみでは掴めなかった教師の思考を分析することができた。
- 国際基督教大学の論文
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