<論文>「ことだ」に関する一考察 : そのモダリティ性を探る
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概要
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「ことだ」のモダリティは(1)「XはYだ」という構文の「Xは」の部分は話し手・聞き手双方が認識可能な場合に省略され,「こと(だ)」はその省略された主題に対応するものとして存在する。また,(2)「ことだ」の各用法はその主題の復元のしやすさの程度に差があり,その程度によってそのモダリティ度にも違いがある。筆者はこの二つの仮説をたて,その検証を行った。(1)の仮説については話し手・聞き手双方が認識している事象についてのみ主題が省略され,それによって文が不完全なものになり,「ことだ」が色々な意味を持っているかのように見えるのだと考える。(2)の仮説については,「ことだ」には,それ自体強く一体化していてかなり高いモダリティ性を持つものと,形式名詞「こと」+ コピュラ「だ」とは言いにくいが,それに近く,モダリティ性はあまり感じられないがようなものがある。理由・根拠を表す用法はかなりモダリティ度が高いが,「ことだ」で助動詞として理由や根拠を表すというより,「こと」が「主観回避」的なニュアンスを加えていると考える。従って,言い換え・要約の用法→伝聞の用法→感嘆・感動を表す用法→「〜することが大切/必要だ」の意味を表す用法,理由・根拠を表す用法の順で助動詞化が進み,これらは形式名詞「こと」+「だ」から助動詞化した「ことだ」への連続した線上に点在することを明らかにした。
- 国際基督教大学の論文
- 1996-03-31
著者
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