老研究者の覚え書養育院時代(2) : 心臓弁膜の老化、老年者の弁膜症、老年者の先天性心奇型、国立小児病院循環器グループとの協同研究

概要

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養育院病院における老人282連続剖検例の検討から、心臓弁膜の老化は長年月繰返された開閉による機械的刺激の累積が弁尖閉鎖縁プロキシマリスの線維弾性板肥厚、スポンジオザ増生;体部のスポンジオザ吸収を伴うフィブロザ肥厚;弁輪結合織の類線維素・硝子様変性、脂肪沈着、石灰化など血行力学的変化として表現される事実が判明した。老化とランブル突起、窓形成の関連も検討した。老年者の弁膜症としては、弁老化病変の進行による変性型弁膜症が特徴的である。弁輪石灰化による僧帽弁逆流7、大動脈弁狭窄4;弁・支持組織弱体化による僧帽弁逸脱7、大動脈弁下垂5;計23剖検心の検索からその成因に結合組織内酸性ムコ多糖類の関与が示唆された。老年者の先天性心奇形は小型心房中隔欠損3、閉鎖または閉鎖進行中の心室中隔欠損4、新概念の部分的左室低形成2、異型大動脈縮窄2、内臓錯位を伴う左心症1;計12剖検例が経験された。小奇形は全剖検心の39%に合併、うちわけは卵円孔開存12%、キァリ網10%が主役である。著者はシカゴより帰国後、東京の国立小児病院の循環器グループの臨床病理検討会CPCに定期的に参加し、症例報告と研究に参画する機会を得た。心奇形に合併する心外奇形のシカゴと本邦の比較では、両者で殆ど同じ結果がみられたが、心室中隔欠損の頻度と型に日米間に相違があり、本邦での血液型B,CCDeeと高位中隔欠損の高率出現が相関する事実が明らかになった。

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