老研究者の覚え書養育院時代(1) : 老年者の心筋梗塞症、冠(状)循環の形態学-血管造影法、心筋の構築-肉眼的剥離法、生理的老化心

概要

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1966年11月シカゴより帰国後、東京都養育院付属病院で心血管病理研究を再開した。1年8ヶ月間に60歳以上の連続剖検356例を経験し、老年特有の感染症、新生物など心疾患以外の5症例報告に関与した。老年者心筋梗塞MIを大量壊死M型52、散在壊死S型12 : 前壁28、後壁29、広汎(全周性)心内膜下Sub型8例に分類、M型は冠状動脈血栓と対応、責任病変はM大型で中枢側2枝、M中・小型で中間部の閉塞、S型は硬化板狭窄とくにSub型で中枢側高度の狭窄が特徴的であった。梗塞後心破裂は左室6、中隔4(右室1を合併)例。M型新鮮MI、女性優位、先行高血圧・陳旧性MIが特徴的で新・旧虚血病変の境界を連ねるジグザグ型穿孔がみられ、1例のみ中隔小型MIの"はじけ"破裂であった。穿孔例では、心筋に超新鮮虚血病変が観察された。本項に関連するパース短大紀要2002, 4(1) : 68-73.記事の訂正・陳謝を挿入した。連続261剖検例の臨床症状・心電図所見と心筋・冠状動脈病変との対比から、MIの最小径はMS型とも径1cm、1cm未満を冠(状)不全と定義するのが妥当と結論できた。92例の死後冠(状)造影所見から、左室心筋内では2分分岐に加えて、中動脈から直接分枝するヒゲ根細枝が密に分布すること、拡張醐巴大心で心内膜下血管密度の増加、収縮・弛緩時に血管走行がラセン化・脱ラセン化する現象などが観察された。5例で肉眼的剥離法による心室の外斜走筋・中層輪状筋・内斜走筋の分離に成功、左室側壁の連続薄切標本から、肥厚・拡張に伴う改築所見を提示した。生理的老化心の特徴を明らかにする目的で正常血圧・正常心電図・非心疾患・有意の冠(状)硬化なしの20-59歳21例と60歳以上15例剖検心の計測値の比較により、加齢に伴う心室容積減少、心房拡大、弁輪拡大、弁尖肥厚がみられた。最後に著者の「心臓形態学」「心臓病理学」のメデカルエンクトロタイムス誌上連載記事の紹介を付記した。
群馬パース大学の論文
2006-09-30

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