東北海道地区における乳牛栄養障害の実態調査 : とくに上士幌町・士幌町の牛を中心とする所見について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
昭和37〜38年の間,春秋2期にわたり東允海道の代表的畑作酪農地帯たる上士幌,士幌両町の乳牛総数372頭の調査検診を行ない,以下の各項所見を得た。1.両町牛とも春期には見かけ上も栄養の低下が目立っており,明らかな不良例が春に46.5%,秋には18%で,秋に相当向上改善することがうかがわれる。2.乳牛に見られた最大の問題点は,両町ともに骨の軟化例の多いことであり,両町の春の平均27%,秋の平均21%と年を通じほぼ一定し多い点が注目されるところである。3.上記の骨軟化に対する主要な成因は,まず低蛋白飼料の摂取に伴う血清蛋白低下例の多いことであって,春は上士幌牛で平均6.4±0.48g/dl,士幌町で6.3±0.71g/dlととも低く,われわれが別途,東北海道で106頭から得た標準値7.50±0.56g/dlとくらべても明らかな所見でこれは秋にはそれぞれ6.94±1.11g/dl,6.98±0.63g/dlと標準値に近く向上することが認められる。4.血清総カルジウム量は,両町とも春期の低下が認められ,上士幌町で平均10.85±1.40mg/dl,士幌町で9.75±1.45mg/dlを示したが,前記標準値の11.30±1.34mg/dlとくらべても秋にはそれぞれ12.82±2.30mg/dl,12.10±2.27mg/dlと大いなる向上を示した点が強調され,春の低下は骨軟化の成因の一つとしても注目すべき問題である。5.血清無機燐量は,春は上士幌町で4.45±1.61mg/dl,士幌町で4.72±1.45mg/dlと標準値5.75±1.04mg/dlにくらべ低下が認められるが,秋には回復し,それぞれ5.19±1.61mg/dl,6.40±1.19mg/dlと向上ずる点がみられ,この春の低下は前2者とならんで骨軟化に関連するものと思われる。6.血漿カロチンならびにV.Aを上士幌町の春期53例,士幌町の秋期88例につき測定したところ,血漿カロチンの最低標準を200γ/dlとすれば,これを下廻るものは春期24.5%,秋期4.5%であって,秋に向上が認められるに対し,V.A量では,これを士幌町の88例のみに限り測定した結果では最低標準値を40γ/dlとした場合,これを下廻るものは15.9%であって,ほぼ本州地方の乳牛などと大同少異で,秋期には標準状態にあるものと知ることができる。7.血中小型ピロプラズマの保有率は春に上士幌町で12%,士幌町で25%を示し,秋にはそれぞれ10%,15%と減少し,僅かながら原虫への耐過えの徴が認められた。8.Gros反応の陽性例が春期上士幌町で77%,士幌で36%を示し,秋期にはそれぞれ31%,17%と減少はしてもなお相当の高率を示したことは注目される所見であって,これら陽性例に対しBromsulfalein法を少数例ながら行ない,比較検討した結果は,すべて陰性成績を示したこと,ならびに血清のろ紙泳動所見を検討した結果よりみて,Gros陽性率の高いことは,肝実質の障害というよりはむしろ低蛋白血症に関連し,おそらく食餌性の低蛋白変化として,アルブミンの減少による点が多いものと判定され,この点で,Gros反応の批判には低蛋白血症を見逃し得ないことが知られた。9.両町牛のうち,士幌牛24例のみに対し,参考的に肝蛭皮内反応を応用したとこち,陽性は16.6%であったが,(+)陽性が1例で,他は微陽性の程度であったことより,糞便検査を併用するまでもなく,この地帯における肝蛭寄生度は低いことが知られ,前述の肝障害を疑う点に関係しないことがわかった。10.好酸球の百分比高多例(15%以上)が上士幌町牛のみで述べても春期97例,秋期61例中の計21%に上ったが,この意義が果していかなる要因によるものか否かを検討するため,ACTHを各頭に40IU宛静注し,Thorn Testを行なって4,6時間の成績を判定したが,9例中,陽性は3例で,これらをいわゆるストレスの所見と解されたが,それらの例はみな妊娠,分娩,泌乳に関係すると解されるもので,過重搾乳によるとは明言し得たものがなく,これらの所見に対しては今後も検討が待たれるのである。
- 帯広畜産大学の論文
- 1965-03-25
著者
関連論文
- 十勝地方の放牧牛に発生したシダ中毒の臨床ならびに病理学的所見
- 179 東北海道地区の放牧牛に発生した牛のシダ中毒の臨床並びに治療所見について (臨床分科会)(第70回日本獣医学会)
- SPFネコにおけるイヌ・パルボウイルスの実験感染
- 子牛の末梢血好中球機能に及ぼす活性卵白粉末の投与効果
- 仔牛の感染および非感染部体表からのTrichophyton verrucosum分離
- 牛飼育環境下の土壌における真菌分布と Trichophyton verrucosumの分離
- 牛初乳免疫グロブリンの子牛下痢症に対する治療および予防効果
- ジヒドロヘプタプレノールの成牛好中球数および機能に及ぼす影響
- 馬の白癬から分離された Microsporum canis の馬に対する人工感染
- 北海道における馬の皮膚真菌症の発生状況について
- Trichophyton equinum のヒトと動物の被毛に対する侵入性について
- 競走馬の皮膚真菌症から分離したTrichophyton equinum
- イヌ・パルボウイルスとネコ汎白血球減少症ウイルスの理化学的ならびに生物学的性状の比較試験
- β-カロチンおよびビタミンAプレミックス投与妊娠牛における血中および乳汁中濃度
- 子牛に対するビタミンAD3E水溶性顆粒剤投与後の血中ビタミンAおよびE濃度
- 北海道産牧草の無機成分含量,とくに土壌-草-家畜システムにおける相互関係について
- ヒツジのエペリスロゾーン症に関する研究 : とくにE.ovisの人工感染例における臨床,血液および電顕所見について
- 牛白血病の臨床ならびに臨床病理学的所見 : VI.腫瘍細胞の光顕および電顕所見
- サラブレッド種子馬にみられた甲状腺腫の臨床病理学的所見(短報)
- 成牛におけるビタミンAD3E水溶性顆粒剤投与後の血中濃度
- 妊娠牛に対するセレニウムとトコフェロ-ル投与後の血中値および過酸化脂質濃度の変動
- 子牛に対するビタミンEプレミックスの粉剤と液剤投与後の血中濃度
- 肉牛の流早産胎子と死亡新生子牛におけるセレニウムおよびトコフェロ-ル値
- 乳牛の急性乳房炎における血液と乳汁中ビタミンA,Eおよびセレニウム値
- 血清酵素による猫の肝機能検査についての検討
- 子牛の地方病性甲状腺腫に関する臨床ならびに臨床病理学的研究
- 子羊白筋症における血清トコフェロール, セレニウム値および血液グルタチオンペルオキシダーゼ活性値
- 牛の第四胃変位における第四胃内ガスの由来
- 妊娠羊に対する無機および有機セレニウムの投与試験
- 子牛白筋症におけるトコフェロール, セレニウム値および血液グルタチオンペルオキシダーゼ活性値について
- アンプロリウムの投与によって作出されたウシ大脳皮質壊死症の臨床および生化学的所見
- 子馬の白筋症における血清セレニウムとトコフェロール値について
- 心筋型白筋症発生農家の同居子牛の臨床病理学的観察
- 子羊の白筋症に関する臨床病理学的観察
- 北海道において観察された牛白血病におけるリンパ球核ポケットの出現(短報)
- Eperythrozoon ovis の走査電顕および透過電顕による観察
- 牛のアミロイド症における腎病変の電子顕微鏡的観察
- 牛の先天性ポルフイリン症(骨髄性ポルフイリン症)の1例
- Feline panleukopenia の臨床・血液所見および骨髄像について
- 牛における全身性アミロイド沈着症の臨床並びに臨床病理学的所見
- Trichophyton verrucosumによる馬の皮膚真菌症の1例
- 115 家畜の疾病例における血清 Transaminase 値について (臨床分科会)(第73回日本獣医学会)
- 292 牛に対する肝蛭駆虫薬Nitroxynil (Trodax)の毒性と駆虫効果について(寄生虫病学分科会)(第71回日本獣医学会記事)
- 214 牛のアミロイドーシスの臨床所見について(臨床分科会)(第71回日本獣医学会記事)
- 多数の転移巣がみられた馬の胸腺腫
- 日本におけるヒツジスクレピーの発生
- イヌパルボウイルス接種SPFネコおよび普通ネコにおける臨床,血液,病理学的所見
- ネコ汎白血球減少症ウイルス接種SPFネコにおける臨床・血液・病理学的所見
- 日本におけるヒツジスクラピーの発生例 : マウスによるスクラピー病原体の分離
- 生体内細胞における猫汎白血球減少症ウィルスの伝播
- 馬に対するセレニウムとトコフェロ-ル大量投与後の血液と臓器中濃度
- 馬に対するセレニウムおよびトコフェロ-ルの投与試験
- 猫の肥満細胞性白血病の1例
- ミオグロビン尿症を伴った放牧子牛のミオパシ-に関する臨床ならびに臨床病理学的観察
- 日本における羊スクレイピ-の追加発生例
- 牛白癬に対するBPMC(2-sec-butylphenyl-N-methylcarbamate)乳剤の治療効果
- 日本における羊スクレピ-の発生例
- Candida zeylanoidesの分離された犬の皮膚腫瘤の一例
- 牛,めん羊,馬および人にみられたTrichophyton verrucosumによる皮膚糸状菌症
- 若齢牛における糖尿病の一例
- 子牛の白筋症に関する臨床ならびに臨床病理学的所見-2-白筋症発病牛舎における同居子牛の血液の生化学的検査所見について
- 成犬における膵臓萎縮の症一例
- 牛の肥満細胞腫の一例
- 牛白血病の臨床ならびに臨床病理学的所見-4-東北海道O町における飼育牛のBLV抗体の調査
- 家畜におけるビタミンEとセレンの重要性について (ビタミンEとセレンを考える)
- 動物用ビタミンE注射液の馬に対する安全性試験と投与後の血清トコフェロ-ル濃度について
- 乳用雄子牛の呼吸器感染に対する塩酸アミノ酢酸チアンフェニコ-ルの応用効果について
- 牛のアクチノマイコ-ジスに対するIsoniazidの治療効果について
- 乳牛の産後起立不能症における血中と尿中ミオグロビンの動態
- 46. 十勝地方において発生した緬羊のピロプラズマ病について(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 草地酪農を主とした営農の技術的解析 : I. 北海道佐呂間町
- ミンクの疾病に関する臨床学的研究 : II.正常ミンクにおける血清蛋白の変について
- 最近十勝地方に発生した牛の伝染性下痢症
- 輸送時における馴鹿の獣医学的考察
- 第4胃変位牛の血液,第1胃および第4胃液の臨床生化学的所見
- 導入直後の乳用雄子牛に対する牛ガンマグロブリン製剤の投与成績
- 犬における骨腎系の病理学的研究
- 39. 乳牛の産褥性血色素血病の一症例(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 12. 乳牛のケトーシスの臨床並びに治療に関する調査研究 : 第3報 健康乳牛の分娩前後に於ける血液,尿アセトン並びに2,3の血液成分の消長について(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 北海道の肉牛における血液,飼料ならびに草地のセレニウムとトコフェロ-ルの動態
- 逆受身赤血球凝集反応によるウシの血中と尿中のミオグロビンの微量測定
- 牛に対するトコフェロ-ルおよびセレニウムの投与試験
- 牛のビタミンB1代謝に関する研究--特にサイアミン塩酸塩とDisulfide型B1の経口的負荷後の血中濃度と尿中排泄
- 免疫拡散法による仔牛の栄養性ミオパチーにおける血中と尿中ミオグロビンの検出について
- ウシミオグロビンの精製と免疫学的方法によるミオグロビンの検出について
- ネフロ-ゼ症候群を示した馬の一例
- 扁桃核群,海馬刺激時の血糖変化について
- 31. 家畜のフラトール中毒,特に組織アルカリフォスファターゼ像について(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 27. 犬の各種肝臓機能検査法の比較について(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 犢牛のリンパ性白血病に関する臨床ならびに血液学的観察
- 子牛の血清免疫グロブリン濃度の経時的変動
- 家畜飼料のFusarium分布とFusariumカビ毒産生性
- 197 牛の単球性白血病2例について (臨床分科会)(第69回日本獣医学会)
- 36 犬における脳脊髄液の研究 : I. 性状犬の知見
- 東北海道地区における乳牛栄養障害の実態調査 : とくに上士幌町・士幌町の牛を中心とする所見について
- 54. 家畜に対する電気衝撃の応用 : 2.電気衝撃と下垂体副腎皮質系との関係(第7回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 牛の胃腸液の培養で採取されたガスの赤外線分析〔英文〕
- 牛の第1胃内ガスの採集および赤外線分析〔英文〕
- 28. 家畜白血球像の日間変動に関する研究 : II. 山羊における好塩基球の日間変動及び2・3の游出因子についての実験(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)