幼児におけるジェスチャーの視点 : 認知的役割取得能力との関連
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概要
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発話に伴うジェスチャーには,主観的視点のものと客観的視点のものの2種類がある(Ozyurek,2000)。これまでの研究で,大人では聞き手の理解状態に配慮する時には客観的視点のジェスチャーが増え(藤井,2000),発達的には年齢が高くなるほど客観的視点のジェスチャーが増えること(藤井,1999),などが指摘されてきた。子どもは,発達に伴い,聞き手がどれだけのものを見せられればどれだけのことを知ることができるかが分かるようになり,それで,ジェスチャーにおいても客観的視点のものをより多く産出するようになるのだろうか。これが本研究の仮説であり,対象児は幼児43名であった。幼児は,認知的役割取得課題によって,聞き手の理解状態に敏感なレベル(レベル2)と,まだあまり敏感でないレベル(レベル1)とに分けられた。結果として,レベル2の子どもでは,レベル1の子どもに比べ,客観的視点のジェスチャーが多いことが明らかになった。ここから,子どもが他者の認知状態をモニターする能力と,客観的視点のジェスチャーを産出することとの間には,関連があることが示唆された。
- 日本教育心理学会の論文
- 2007-06-30
著者
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針生 悦子
東京大学大学院教育学研究科
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針生 悦子
東京大学教育学部:日本学術振興会特別研究員
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針生 悦子
日本学術振興会
-
片山 顕裕
東京大学大学院教育学研究科
-
片山 顕裕
東京大学大学院教育学研究科:(現)(株)日本総研ソリューションズ
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