脂質過酸化物により劣化させられたチューブリンのGTPase活性に対するSH基還元剤(グルタチオン・システイン)の回復効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
チューブリンは重合により微小管を形成し,様々な細胞機能を発現する.チューブリンは微小管を形成する時,GTPase活性を発現する.よって,このGTPase活性を測定することは細胞機能の指標となる.脂質過酸化物が細胞の劣化を導くことはよく知られている.細胞膜はリン脂質より構成されていることから,細胞膜中の脂質が酸化させられて,細胞の老化を導いている可能性が考えられる.そこで,脂質過酸化物により劣化させられたチューブリンのGTPase活性を回復させることを目的として,水溶性の抗酸化剤を用い,その回復効果を検討した.調製された脂質過酸化物は,HPLCに接続されたECDおよびマススペクトルの測定からモノヒドロペルオキシドであることが確認された.水溶性還元剤としては,グルタチオンとシステインを使用した.脂質過酸化物の添加量が増加するごとに,チューブリンのGTPase活性は大きく阻害された.また,極少量の脂質過酸化物の存在下でも,チューブリンのGTPase活性は低下した.このことは,生体内の極僅かな脂質過酸化物の存在でも,生体に影響を与えることを示唆するものである.いずれの水溶性還元剤の添加の場合も,脂質過酸化物により劣化させられたチューブリンのGTPase活性は僅かではあったが回復した.これらの事実はグルタチオンとシステインが,生体で生じた酸化生成物を還元することで細胞機能を復活させ,細胞の老化を抑制する効果のあることを示唆するものである.
- 武庫川女子大学の論文
著者
-
清原 利文
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
-
川上 美佐子
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
-
中野 美江
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
-
土井 裕司
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
-
土井 裕司
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科:武庫川女子大学バイオサイエンス研究所
-
土井 裕司
武庫川女子大・食物栄養
-
清原 利文
武庫川女大 生活環境
関連論文
- ソバ種実から得られるキチン結合性タンパク質の性質
- ソバ種実から得られる低分子性タンパク質のキチン結合活性ならびに抗真菌活性
- 担子菌Tricholoma sp.の生産するプロテアーゼの精製と特性
- 担子菌の生産するプロテアーゼの検索
- きのこ線溶酵素のマウスへの経口投与
- 担子菌による線溶活性物質生産の培養条件
- 担子菌および各種微生物の産生する線溶酵素 : 微生物
- ソバトリプシンインヒビターIIIb(BTI-IIIb)の部分アミノ酸配列について : 酵素
- バレイショのポリペプチド性トリプシンインヒビターC(TIc)のアミノ酸配列と反応部位について
- バレイショのポリペプチド性プロティナーゼインヒビターの分離と性質について
- アズキのtrypsin isoinhibitorsの分離およびそれらの性質
- 馬鈴薯からえられるプロテイナーゼインヒビター I の精製ならびに二, 三の性質について(農芸化学)
- チュ-ブリンのGTPase活性に及ぼすリン脂質過酸化物の影響
- 脂質過酸化物により劣化させられたチューブリンのGTPase活性に対するSH基還元剤(グルタチオン・システイン)の回復効果
- ソバ種実から得られる低分子性タンパク質の精製と2,3の理化学的性質
- チューブリンからの微小管形成に及ぼすレシチン過酸化物の影響
- 担子菌のつくる線溶酵素の検索
- 大麦分級粉のアミノ酸組成とプロテア-ゼ活性
- 牛乳κ-カゼインペプチドとチュ-ブリンとの相互作用--超遠心分析を中心として
- 国産大麦分級粉からのアミノペプチダーゼの精製 : 食品