当科小児難聴外来におけるムンプス難聴症例の検討

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ムンプスは耳下腺腫脹と発熱を特徴とする伝染性疾患であり,頻度は少ないが聴器に侵襲し難聴を起こすことがある。昭和58年に厚生省特定疾患高度難聴調査研究班によって,ムンプス難聴と名づけられ,その診断基準(昭和62年度改訂)が作成された。昭和60年1月から平成1年12月までの5年間に,当科小児難聴外来を受診した623例中,この診断基準に基づきムンプス難聴確実例と診断されたのは18例であり,この症例につき検討を加えた。発症年齢は2歳から14歳までであり,そのうち5歳から9歳までの症例が72.2%を占め,ムンプスの好発年齢と一致した。全例一側性高度感音難聴であり,同時期の一側性感音難聴症例の9.8%を占めた。千葉県内の定点観測点のムンプスの年度別症例数とムンプス難聴の年度別症例数を比較したところ,ムンプス難聴の発生は千葉県内のムンプス流行とほぼ一致した。ELISA法により血中IgM抗体,IgG抗体を検査した症例は12例であり,IgG抗体は全例で陽性,そのうち8例(66.7%)が血中IgM抗体陽性であった。比較的早期に受診した6例に対し突発性難聴に準じた治療を行ったが治療に抵抗した。ムンプス難聴は比較的稀な疾患ではあるが,障害は高度であり,有効な治療法はないのが現状である。ワクチン接種による予防によりムンプス難聴の症例が減少するものと期待される。しかしワクチン接種後に難聴をきたした症例が報告されてきている現在,ムンプスに罹患していない一側性難聴症例に対して積極的にワクチン接種を勧めることに躊躇している。
千葉大学の論文
1991-04-01

当科小児難聴外来におけるムンプス難聴症例の検討

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