屋久島新規移入動物であるタヌキから検出されたウェステルマン肺吸虫といくつかの珍しい腸管寄生吸虫(寄生虫病学)
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概要
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屋久島で調査捕獲されたホンドタヌキ9頭と交通事故死したコイタチ2頭について,寄生蠕虫の検索を行った.その導入経緯は不詳ながら,タヌキは世界自然遺産ともなっている屋久島に1990年代初頭までに人為的に入り,その後個体数が急増している.タヌキから確認された吸虫類は,肺からのウェステルマン肺吸虫3倍体,腸管からのBrachylaima tokudai, Maritrema eroliaeおよびPseudocryptotropa sp.であった.一方,コイタチ1頭の肺からは大平肺吸虫が検出された.屋久島の河口域に棲息する中間宿主カニ類について実施された過去の調査から,本島にはウェステルマン肺吸虫3倍体と大平肺吸虫の分布が知られていたが,野生動物での自然感染が終宿主レベルで確認されたのは初めてである.特に,ウェステルマン肺吸虫3倍体に感染していたタヌキは,人の居住地でもある河口域から離れた山岳地帯で捕獲された.ウェステルマン肺吸虫3倍体が分布する河口域で感染して,その後に山岳地帯に移動したとも考えられるが,分布拡大を続けるタヌキ,あるいは山岳地帯を含めた本島で近年同様に増加しているノネコ(Felis catus)がその自然終宿主となって,本肺吸虫の浸淫地が拡大している可能性も検討されるべきである.水辺の鳥類を自然終宿主とするMaritrema eroliaeおよび自然宿主が未知のPseudocryptotropa sp.がタヌキから検出されたのは初めてであり,新宿主記録となる.
- 2006-07-25
著者
-
青木 正成
自然環境研究センター
-
長内 理大
弘前大学医学部感染生体防御学講座
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鈴木 和男
田辺市ふるさと自然公園センター
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佐藤 宏
弘前大学医学部寄生虫学講座
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青木 正成
(財)自然環境研究センター
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鈴木 和男
田辺市ひき岩群ふるさと自然公園センター
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佐藤 宏
山口大学農学部
-
長内 理大
弘前大学医学部寄生虫学講座
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佐藤 宏
弘前大学医学部寄生虫学教室
-
佐藤 宏
山口大学 農学部獣医寄生虫病学研究室
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鈴木 和男
自然環境教育センター
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