屋久島に近年導入されたタヌキから検出した線虫種(寄生虫病学)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
世界自然遺産となっている屋久島では,ここ20年間ほどのうちに新たに導入されたホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides viverrinus)が定着してきた.このホンドタヌキの寄生線虫について検討したところ,7種(タヌキ回虫,串間鉤虫,宮崎タヌキ鉤虫,ネコ糞線虫,イヌ鞭虫,Gongylonema sp.3期幼虫,ならびにイヌ糸状虫)が確認された.屋久島に自然分布するコイタチ(Mustela itatsi)2頭の交通事故死材料からは,線虫2種(Molineus legeraeおよびStrongyloides martis)が検出された.屋久島には,コイタチやイヌ,ネコを除き,キツネや他種食肉類は分布していないことを考えると,タヌキから検出された土壌媒介性線虫の多く,少なくともタヌキ回虫,鉤虫2種,ネコ糞線虫は本土から持ち込まれた個体集団に由来するものであり,その後も,高率な感染が新しい世代により維持されていると推測された.また,タヌキの食道からのGongylonema sp.幼虫の検出は79%と高率であり,タヌキはかなり頻繁に昆虫を食べていることが推測された.Strongyloides martisは国内のイタチ類からは未確認であったが,今回の検出記録から考えると,ユーラシア大陸のイタチ科野生動物に広く感染していることが推測される.
- 2006-07-25
著者
-
青木 正成
自然環境研究センター
-
鈴木 和男
田辺市ふるさと自然公園センター
-
青木 正成
(財)自然環境研究センター
-
鈴木 和男
ひき岩群ふるさと自然公園センター
-
佐藤 宏
山口大学農学部
-
佐藤 宏
山口大学 農学部獣医寄生虫病学研究室
-
鈴木 和男
自然環境教育センター
関連論文
- 大阪府および兵庫県の2地域における野生アライグマと犬のレプトスピラ抗体保有状況調査 (日本小動物獣医学会誌)
- 京都府におけるアライグマの母系解析
- ユビナガコウモリ Miniopterus fuliginosus (Hodgson, 1835) が利用する紀伊半島南部の3洞窟における気温
- 奈良県吉野郡下北山村に見られるユビナガコウモリ (Miniopterus fuliginosus) 冬眠群の移動 : (1) 出産・子育て場所
- 10 小笠原諸島東島にすむクマネズミの胃内容物に見いだされた海鳥(第60回日本衛生動物学会東日本支部大会講演要旨)
- 広東住血線虫の兄島における分布
- 屋久島のタヌキから検出された鳥類寄生性鉤頭虫種(寄生虫病学)
- 屋久島新規移入動物であるタヌキから検出されたウェステルマン肺吸虫といくつかの珍しい腸管寄生吸虫(寄生虫病学)
- 屋久島に近年導入されたタヌキから検出した線虫種(寄生虫病学)
- 和歌山県白浜町で出生したユビナガコウモリ,Miniopterus fuliginosusの移動(1)2003,2004年
- 2 小笠原諸島におけるクマネズミ導入の歴史と根絶作業の適期(第59回日本衛生動物学会東日本支部大会講演要旨)
- 国内で野生化したアライグマ(Procyon lotor)からの鳥類寄生性鉤頭虫7種の検出(寄生虫病学)
- 和歌山県下で捕獲された野生化アライグマ(Procyon lotor)の消化管寄生蠕虫(寄生虫病学)
- アライグマ蛔虫症 (特集 家畜と野生動物における人と動物の共通感染症)
- アライグマミトコンドリアDNA多型の地理的分布
- ワラビ成分のモルモットにおける溶血活性
- モルモットでの新しい溶血試験法の開発
- 大阪府および兵庫県の2地域における野生アライグマと犬のレプトスピラ抗体保有状況調査
- ニホンジカとニホンカモシカの排糞量・回数
- 奈良公園のシカの胃内容物分析
- A mass-mortality of Sika deer on Kinkazan Island, northern Japan
- 福井県で捕獲されたアライグマの母系解析