和歌山県下で捕獲された野生化アライグマ(Procyon lotor)の消化管寄生蠕虫(寄生虫病学)
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概要
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ペットとして国内に入ったアライグマが野生化し,国内で急速にその個体数と分布域を広げている.外来種アライグマの野生化が最も顕著に進行している地域の1つが和歌山県であり,ここでは10年間の潜行期を経て,最近5年間に爆発的な個体数の増加が起こっている.2002年夏から市町村単位の駆除対策が開始され,2003年5月から2005年4月にかけて駆除された531頭の野生化アライグマについて消化管寄生虫を検索する機会を得た.確認された寄生蠕虫は,線虫6種(Physaloptera sp.[検出率5.1%],Contracaecum spiculigerum[0.9%],アライグマ糞線虫[25.5%],串間鉤虫[0.8%],宮崎タヌキ鉤虫[0.4%]およびMolineus legerae[1.1%]),吸虫7種(浅田棘口吸虫[4.9%],34〜39本の頭冠棘をもつ未同定棘口吸虫[1.7%],高橋吸虫[12.4%],横川吸虫[0.8%],Plagiorchis muris[0.2%],Macroorchis spinulosus[1.9%]およびConsinium ten[0.2%]),条虫1種(Mesocestoides sp.[0.2%]),野鳥寄生性鉤頭虫6種(Centrorhynchus bazalenticus[0.2%], Centrorhynchus teres[5.5%], Sphaerirostris lanceoides[2.4%],Plagiorhynchus ogatai[0.6%], Porrorchis oti[1.5%]およびSouthwelina hispida[1.9%])であった.確認された寄生虫の多くは,昆虫,甲殻類,両生類,爬虫類,魚などの食餌を介して感染する在来種であった.未同定Physaloptera属胃虫は在来動物から検出されたことのない種であり,原産地北米大陸のアライグマで一般的なラーラ胃虫(Physaloptera rara)に形態学的に酷似しているが,雄虫尾腹面のファスミッドの位置に違いがあった.アライグマ糞線虫は,人で皮膚爬行症と顕在性腸管感染を起こすことが実験的に知られており,注意が必要である.国内各地での野生化アライグマの急増については,公衆衛生あるいは動物衛生といった視点からも論議が必要な問題であると考える.
- 2006-04-25
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