いもち病罹病イネ株内におけるいもち病菌のPot2遺伝子型およびレースの垂直分布
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
いもち病罹病イネ1株内のいもち病菌個体群の垂直分布実態を明らかにする目的で,山形県庄内地方の地理的に離れた2ヵ所の水田で自然発病した各々2株の各種部位に形成された病斑からいもち病菌を分離し,Pot2遺伝子型と病原レースの垂直分布を調べた.供試イネ品種は'はえぬき'で,第7葉,第10葉および止葉の葉身,穂首,籾の病斑から単胞子分離した菌株を解析した.その結果,遺伝子型については,一方の水田,立川町大中島の1株からは4種の遺伝子型の菌が得られたが,残りの株には2種類の遺伝子型が分布した.また,他方の水田,朝日村上平からの罹病株ではそれぞれ4種類,7種類の遺伝子型の菌が分布するなど,イネ1株内に分布するいもち病菌の遺伝子型はかなり多様であることが示唆された.それぞれのイネ株における分離組織の位置と分離菌株の遺伝子型をみると,籾,穂首,止葉からの分離菌の遺伝子型は下位の葉身からの分離菌のそれと異なり,遺伝的に多様な菌株が分布する傾向がみられた.レースに関しては,一方の水田,立川町大中島の2株からの分離菌株すべてがレース007.0に属した.しかし,他の水田,朝日村上平の1株に分布したいもち病菌はレース007. 0のみであったが,他の株からは,複数の組織,同一病斑からもレース007.0と037.1の2種類の菌株が分離された.以上から,罹病イネの株内に分布するいもち病菌の個体群構成は遺伝的に多様であり,1株内のいもち病菌遺伝子型の垂直分布の実態は株ごとに異なりかなり複雑であることが示された.
- 2006-05-25
著者
-
芦澤 武人
中央農研
-
生井 恒雄
山形大学農学部生物生産学科生産生態制御学講座
-
生井 恒雄
山形大農
-
上林 千裕
山形大学農学部
-
芦澤 武人
独立行政法人農業・生物特定産業技術研究機構 東北農業研究センター水田利用部
-
上林 千裕
千葉大園
-
生井 恒雄
山形大学農学部
関連論文
- (146) GFP遺伝子を導入したいもち病菌を用いた穂いもち感染過程の顕微鏡観察(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- 野外におけるイネいもち病の第一次伝染源に関する研究(1) : ビニール袋に被覆され積雪下で越冬した籾殻におけるイネいもち病菌の生存と第一次伝染源としての役割
- (105) 日本産ダイズ茎疫病菌の真性抵抗性遺伝子型(Rps)を異にするダイズ品種に対する病原性(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (167) 健全イネおよびいもち病罹病イネに生息する細菌の群集構造およびいもち病菌に対する拮抗能(平成18年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (98) イネいもち病菌のDNA組換え修復遺伝子Rhm54の解析(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (96) イネいもち病菌の非病原性遺伝子AVR-Piaのクローニング(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (107) イネいもち病菌の非病原性遺伝子Avr-Piaのクローニング(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (106) 日本産イネいもち病菌株におけるAvr-Pitaホモログの解析(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (61) イネいもち病菌株OS99-G-7aの病原性獲得に関わるAvr-Pitaの遺伝子変異(平成18年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (60) イネいもち病菌の非病原性遺伝子Avr-Piaのクローニング(平成18年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (157) イネいもち病菌の水田圃場における病原性突然変異頻度の推定(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (156) マルチライン用葉いもち病勢進展シミュレーションモデルBLASTMULへの突然変異パラメータの導入(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (27) リアルタイムPCR法による土壌中のイネ稲こうじ病菌定量法の検討(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (147) リアルタイムPCR法によるイネ稲こうじ病菌の定量法の検討(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- コシヒカリBL混植圃場より分離したイネいもち病菌病原性変異株の病原力(関東部会講演要旨,平成17年度地域部会講演要旨)
- (5) ササニシキ同質遺伝子系統の混合比率決定におけるBLASTMUL(多系品種葉いもち病勢進展シミュレーションモデル)の宮城県での利用(東北部会講演要旨, 平成16年度地域部会講演要旨)
- (47) イネ以外のイネ科植物宿主を強制的に通過させたイネいもち病菌の変異(平成17年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (4)ジュズダマに接種した後に再分離して得られたイネいもち病菌の変異株について(東北部会講演要旨)(平成15年度地域部会講演要旨)
- (151)マルチラインシミュレーションモデル(BLASTMUL)の新潟県のコシヒカリマルチラインにおける適合性の検討(平成16年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (22)コシヒカリ同質遺伝子系統の親和性及び非親和性イネいもち病菌接種に対する穂いもち抵抗性の系統間差と圃場における同抵抗性発現の可能性(平成16年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (1)水稲「北海188号」の葉いもち圃場抵抗性の遺伝分析(関東部会講演要旨)(平成15年度地域部会講演要旨)
- (120) 同一抵抗性品種の穂を2度通過させたいもち病菌の病原性変異株の発生 (平成11年度 日本植物病理学会大会)
- 抵抗性イネ品種の穂から再分離したいもち病菌の病原性変異に及ぼす通過イネの真性抵抗性遺伝子の影響
- (24) 山形県庄内地方における新品種はえぬき, どまんなかの導入に伴ういもち病菌レース構成の変動 (東北部会)
- (155)異なる真性抵抗性遺伝子を持つイネの穂を通過させたイネいもち病菌の病原性の変異(平成9年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- イネ新品種はえぬきおよびどまんなかの穂を通過した非親和性いもち病菌レースの病原性変異
- (39) イネいもち病菌非親和性レースに対するササニシキ多系品種の穂の反応 (日本植物病理大会)
- (38) イネ新品種の栽培に伴ういもち病菌レース構成の変動と分離菌の新品種の穂に対する病原性 (日本植物病理大会)
- (81) 水稲品種「宮崎もち」の穂いもち圃場抵抗性遺伝子と連鎖するSTSマーカーの開発(平成18年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (68) マルチラインにおける穂いもち発生に及ぼす要因(平成18年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (43) QTL解析による水稲品種「宮崎もち」の葉いもちと穂いもち圃場抵抗性に関与する遺伝子の相違関係の推定(平成17年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (41) イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34に対応するいもち病菌の非病原性遺伝子AVR-Pi34の同定(平成17年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (39) 2, 3のり病植物における不飽和脂肪酸の酸化酵素活性 (夏期関東部会講演要旨)
- いもち病罹病イネ株内におけるいもち病菌のPot2遺伝子型およびレースの垂直分布
- (143) はえぬき栽培圃場近辺のササニシキ穂から分離したいもち病菌の病原性 (日本植物病理学会大会)
- (86)切り穂噴霧接種による穂いもち圃場抵抗性検定の赤かび病による障害のチオファネートメチル剤と同剤耐性イネいもち病菌の併用による除去(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- 電解強酸性水(機能水)散布による温室栽培メロンのうどんこ病防除
- (8)電気分解強酸性水によるメロンうどんこ病の防除
- いもち病感染イネ葉におけるリポキシゲナーゼ活性の変動
- 鉄化合物処理トマト下胚軸におけるファイトアレキシン(リシチン)と抗菌性物質(トマチン)の検出
- (322)鉄化合物水溶液処理トマト下胚軸におけるリシチン, トマチンの蓄積
- (54) クリスマスローズに発生したべと病および炭疽病(新称)(平成20年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (9) Botrytis cinereaによるブロワリア灰色かび病の発生(新称)(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (40) GFP遺伝子導入イネいもち病菌に対する葉いもち圃場抵抗性の異なるイネ品種「奥羽351号」と「コシヒカリ」の表皮細胞の反応と病斑形成(平成17年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- セルトレイと植物生育調節剤を利用したイネいもち病菌レース判別試験の効率化
- (15)GFP遺伝子導入イネいもち病菌に対する葉いもち圃場抵抗性の異なるイネ品種「トヨニシキ」と「ササニシキ」の表皮細胞の反応と病斑形成(平成16年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (14)イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi34の物理地図上へのマッピン(平成16年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (3)イネ系統「中部32号」のいもち病圃場抵抗性が遺伝子対遺伝子説で説明できる可能性の遺伝解析による検討(東北部会講演要旨)(平成15年度地域部会講演要旨)
- (2)突然変異あるいは遺伝的組換えで得られたイネいもち病菌レース777.1および777.3について(東北部会講演要旨)(平成15年度地域部会講演要旨)
- (134)3同質遺伝子系統混植下で3菌系による葉いもち発病を推定するためのマルチラインシミュレーションモデル(BLASTMUL)の改良(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- カンアオイ(Asarum nipponicum F. Maekawa)葉身の斑点から分離されたPyricularia属菌
- 育苗期のイネいもち病の発生と苗のケイ酸含有率との関係(東北部会講演要旨)
- 追肥, 低温, 遮光処理下でのいもち病発生とイネの加齢および品種の本病抵抗性に及ぼすケイ酸の影響
- イネ苗いもちのケイ酸資材シリカゲル育苗土混和による発病抑制
- (90)イネ葉いもちの発生に及ぼすシリカゲル施用の効果(平成9年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (145)ジュズダマを通過したイネいもち病菌野外株の変異(平成14年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- 親和性,非親和性品種の組織を通過させたイネいもち病菌野外株の再分離株の病原性とpot2repPCR フィンガープリンティングバンドパターン(東北部会講演要旨)
- イネ稲こうじ病菌特異的プライマーを用いたNested-PCRによる圃場に栽培された出穂前後の穂からの検出
- いもち病罹病イネ葉を用いた試験管内酵素反応により生成されたα-リノレン酸のヒドロパーオキシドの細胞毒性と抗いもち病菌活性
- (104) 二,三の植物における, 病原菌罹病とリポキシゲナーゼ活性の関連性 (日本植物病理学会大会)
- 野菜類軟腐病菌の増殖に及ぼすハクサイ組織からの抽出物の影響
- ハクサイ根圏における軟腐病菌の増殖と根からの分泌物との関係(東北部会講演要旨)
- イネ品種「まなむすめ」のいもち病菌に対する表皮細胞の反応
- 蛍光性拮抗細菌によるハクサイ軟腐病の生物防御に関する研究
- (17) ハクサイ軟腐病菌の拮抗菌の分離について (平成10年度東北部会)
- 水田圃場におけるイネいもち病菌の病原性突然変異頻度の推定
- (6) 山形県庄内地方におけるメヒシバいもち病菌の生態について(東北部会講演要旨, 平成16年度地域部会講演要旨)
- (165) いもち病菌の生産する新しい植物毒素について (日本植物病理大会)
- (18) 山形県に分布するセイヨウナシ輪紋病菌について(東北部会講演要旨, 平成16年度地域部会講演要旨)
- パクチョイ(Pak-choi)の軟腐病(新病害)
- (53) 山形県庄内地方の水田におけるイネいもち病菌Pot2遺伝子型とレースの季節的遷移(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (38) 非親和性イネいもち病菌のササニシキ4同質遺伝子系統の穂の発病に及ぼす温度の影響 (平成10年度東北部会)
- ワイルドライス (アメリカマコモ) に発生したいもち病
- イネいもち病菌の葉鞘裏面組織への感染におよぼすイネいもち病菌の2毒素と1誘導体の影響
- ハクサイ葉上の軟腐病菌の感染源としての役割
- 殺菌土壌におけるハクサイ軟腐病の発生について
- 鉄化合物処理によるトマト青枯病の発病抑制
- いもち病激発年と少発年に発生したいもち病菌の病原力
- (133)コシヒカリとその抵抗性同質遺伝子系統の混植栽培での穂いもち発病抑制に関与する要因(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- 1穂内のいもち病罹病全イネ籾から分離されたPyricularia griseaのPot2遺伝子型(学術報告)
- (144)いもち病激発イネ株の各組織に分布するいもち病菌のレースと遺伝的異同(平成16年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (5)イネいもち病常発水田周辺の植物より分離された糸状菌(東北部会講演要旨)(平成15年度地域部会講演要旨)
- (58)2001年に北海道・東北地方に分布したイネいもち病菌のレース(平成14年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- 2001年に北海道・東北地方に分布したイネいもち病菌レース
- (131)圃場におけるイネいもち病菌の飛散およびレースの季節的変化(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- (127)圃場におけるイネもち病菌の遺伝的系統の季節的変化(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- イネ種子玄米における侵入いもち病菌の動態と防除
- 数種のイネ種子伝染性病害を対象とした温湯種子消毒
- 圃場に残存している野菜類組織内の軟腐病細菌の検出
- ハクサイの軟腐病病班および根圏土壌における病源細菌のファージ型の分布
- イネいもち病の感染に及ぼすイネいもち病菌胞子浸出液の影響
- (6)イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi24(t)の大規模F_3集団を用いたマッピング(平成15年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- ササニシキ同質遺伝子系統の非病原性イネいもち病菌接種による穂いもち発病と同菌株の前接種による穂いもち発病抑制
- (155)2同質遺伝子系統混植下で2菌系による葉いもちの発病を予測するためのマルチラインシミュレーションモデル(BLASTMUL)の改良(平成14年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- (82)イネ系統「中部32号」のいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi24(t)のマッピング(平成14年度 日本植物病理学会大会講演要旨)
- イネいもち病多発圃場におけるササニシキおよびひとめぼれ同質遺伝子系統の本病発病の系統間差
- 鉄化合物処理トマト胚軸におけるトマト青枯病菌の消長と植物病害抵抗性関連酵素,POX,LOX活性の経日的変化
- 葉いもち病斑の型といもち病感染イネのズリコミとの関係
- 異なる真性抵抗性遺伝子をもつイネ品種を継代通過したいもち病菌Pyricularia oryzaeレース337の病原力の変動
- イネいもち病菌菌株間の病原力の程度と病原性の幅の広さとの関係