中央卸売市場における仲卸業者の機能の変化 : 東京都中央卸売市場大田市場の青果物流通を事例として
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概要
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中央卸売市場は,青果物の流通においては最も重要な組織である.青果物を取り扱う中央卸売市場は,全国に74市場ある.青果物の市場経由率はおよそ90%である.また,中央卸売市場の青果物の卸売市場に占める割合はおよそ55%である.中央卸売市場の開設者である地方公共団体は,卸売や仲卸に必要な施設を設置し,卸売業者や仲卸業者に貸し付けなければならない.中央卸売市場は,卸売業者および仲卸業者で構成される.仲卸業者は,中央卸売市場内に自分の店舗を持ち,卸売業者から仕入れた商品を選別調整して,小売業者に販売する.全国の仲卸業者数は,2,628業者であり,1市場平均では36業者である.東京都中央卸売市場大田市場の仲卸業者数は,207業者である.本論文では,大田市場の青果物を取り扱う21社の仲卸業者に対しアンケート調査を実施し,解析した.仲卸業者が卸売業者から仕入れる青果物の割合は,総仕入額の88%であるが,セリによって仕入れる割合は,総仕入額の19%に過ぎない.他は,先取り取引,予約相対取引等で仕入れる.取引規模の大きい業者になればなるほど,予約相対取引で仕入れる割合が大きくなる.中央卸売市場における取引では,通常のセリは,もはや最も一般的な方法ではない.調査したすべての仲卸業者は,量販店と取り引きしている.取扱規模の大きい仲卸業者ほど,量販店に販売する割合が大きい.消費者の所得増加と生活形態の変化によって,より多くの青果物が量販店を通じて購入されるようになった.小売市場における変化は,卸売市場機構の変化を引き起こした.そして,それは仲卸業者の取引機能をより複雑なものにした.仲卸業者の従来の機能は,卸売業者から仕入れ,選別調整し,種々の青果物を零細な小売店に販売することである.仲卸業者の新しい機能は,量販店の専門的代理業者として,規格化された生産物を先取り取引や予約相対取引等により,卸売業者から一定の時間内に仕入れることである.
- 千葉大学の論文
- 1994-03-25
著者
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