間接的言語行為の可能性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
様々な種類の発話の中には, 発話される文の字義どおりの意味によって理解されるものもあれば, その文の字義どおりの意味によっては理解できないものもある。後者には, 幾つもの種類の発話が含まれるが, その中の一つとして, いわゆる間接的言語行為と呼ばれる発話がある。今回検討するのは, その「間接的言語行為」(indirect speech acts) と呼ばれる発話で, 特に間接的依頼を直接の対象にする。具体的な例としては, 間接的依頼として使用される "Can you pass the salt?" (「あなたは, 塩を手渡すことができますか。」) などがある。そのような間接的言語行為の存在そのものを疑い, その存在を否定する意見が出されてきているが, 果たして間接的言語行為は存在しうるのか, その存在の可能性をどこまで主張できるのかという問題に取り組むのが今回の目的であるが, その取り組み方には複数の方法・方向があり, それら全てを扱うことは今回はできないので, 間接的言語行為の代表的な理論の一つである Searle の間接的言語行為理論を中心にして検討を加えていくことにする。Searle の理論を選ぶのは, その基を成す Austin とSearle の言語行為理論自体の可能性を探る上でも, 極めて重要だからである。そして, Searle 自身の間接的言語行為理論のみならず, あくまでも言語行為理論の枠内での間接的言語行為の可能性を探る意味で, その他の間接的言語行為の理論 (説, 主張など) も対象にするが, Searle→Morgan→Bach and Hamish (+Clark)という具合に, Searle の理論を修正・補強・発展させる方向を中心に検討する。そのような意味で, 残念ながら, 言語行為理論の枠外での間接的言語行為の理論 (説, 主張など) は, 必要な限り取り上げ, 必要な限り検討する程度で, 深く入ることはできない。なお, 検討の順序は, 「はじめに」, 「間接的言語行為の問題点」, 「Searle による間接的言語行為の定義」, 「Searle による慣習的に使用される文の例と推論過程」, 「間接的言語行為の分類に関する Searle の問題点」, 「慣習の捉え方」, 「二行為の遂行の可能性」, 「間接的言語行為における文の形態と発語内的力の関係」, 「最後に」となる。
- 跡見学園女子大学の論文
- 1998-03-15
著者
関連論文
- 大学レベルにおける基本的なコミュニケーション能力育成
- 特定文化から見るコミュニケーション-所属文化と共有文化による人間関係の分析-
- 「拡充」に関する語用論的解釈:指示物付与・曖昧性除去と含意からの区別
- アイロニー : 伝統的なアプローチと最近のアプローチ (2)
- アイロニー : 伝統的なアプローチと最近のアプローチ (1)
- 嘘の基準-話し手側からの視点-
- 関連性に関する理論 : 「関連性」概念に対する Grice, Dascal, Sperber & Wilson の取組み方
- 実学という名の非実学、そして非実学という名の実学 -大学教育編-
- 大学生の日本語ディベート能力の開発
- MISCELLANEOUS 日本語表現能力に関する実践的教育-演習「プロゼミII」の実態調査-
- 真実と表現-レトリックとコミュニケーションを中心にして-
- 多文化コミュニケーション論の基本的特徴について
- 隠喩理論 : サールとレイコフ
- 隠喩・換喩・提喩 : 言語表現の考察
- レトリック(言語表現技術論)の実践教育
- 近代日本における多文化性とコミュニケーション
- 「前提」概念に関するストローソンの定義
- 指示理論における確定記述と話し手の指示の意義
- 現代レトリックの流れ(新「古典」の研究)
- 発話の類型と動詞の種類 : 発語内行為に関するオースティンとサールの分類法
- 間接的言語行為の可能性
- 指標詞と指示詞 : 指示と意味の関係に対するフレーゲ的説明と反フレーゲ的説明
- 固有名の指示 : 固有名詞に関する記述理論と因果理論の相違
- 会話含意算出の為の推論過程 : グライス的推論形式に対する評価
- レトリック(言語表現技術論)の実践教育
- 「言葉は力なり」の解釈-言語行為の力とその他の力-
- 句読点の方法論的分析-読点をどこに、なぜ打つのか-
- 嘘の根拠と領域-個人レベルと組織レベル-
- 喚喩的思考と提喩的思考に基づく行動様式
- 近代日本における多文化性とコミュニケーション
- 話し言葉vs 書き言葉 : アルキダマス「ソフィストについて」-翻訳と解説-