「前提」概念に関するストローソンの定義
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概要
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フレーゲ以降, 「指示」概念との関係で論じられてきた「前提」概念に関する論争は, ストローソンの定義の出現により新しい方向性を見, 更にそれを出発点として新たな論議を生みだした。そこで, フレーゲ以降, ラッセルを経てストローソンに至る論争を分析・検討することを本稿の主目的とし, そのことによりストローソン前提理論の理解を深めていくことにする。"On Sense and Reference" (1892) で示されたフレーゲの意味と指示の区別は, 最も重要な発見の一つとされているが, それに続くラッセルは, "On Denoting" (1905) の中でフレーゲによる意味と指示の区別によっては解決不可能な重大な問題があるとして否定し, 指示対象欠如の問題を提起した。この問題提起に対する根本的解決策が出されるまでに45年間かかったが, ついにストローソンによる "On Referring" (1950) の発表によってその解決策が示され, それはフレーゲの意味と指示の区別を復活・保持し, 更に日常言語が持つ三側面を取り入れて出来た指示理論であった。その後, オースティン, クワインの賛同を得たことにより, 自らの主張を変更することなく, むしろ確信を得たストローソンは, "Identifying Reference and Truth-values" (1964) の中で, "On Referring" で示された自らの指示理論に対する理論的裏付け作業として再度指示対象欠如の問題を取り上げ, ラッセルとの対立点と自らの正当性を確認した。こうした指示理論の歴史は, 同時に前提理論の歴史でもあった。以上の点を具体的に分析・検討し, とくにフレーゲとストローソンの関係で前提理論を浮彫りにさせていくことにする。
- 1991-03-20
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