企業における人間と人間資源管理の役割
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は,人間観(企業において人間をどのように捉えるべきか),及び人間性(そのような人間の特質),加えて,企業組織とそこに所属する人間個人の目的の適合を基礎として,人間資源管理の役割を明らかにするものである。まずテイラーは,企業における人間の存在を明らかにしたが,その人間は,自ら目的を持って意思決定を行う存在ではなかった。そして彼は,人間機械モデルに基づいた管理方法を打ち出した。これに対し,バーナードやサイモン,マクレガー,シャインは,機械モデルを批判した。彼らは,企業における人間について,企業は人間によって機能するという,企業の主体的役割を担荷していることを明らかにし,加えて,物理的,生物的,社会的関係の中で存在している,と指摘した。そして,その人間の特質は,制限された合理性の中で,目的指向的に行動し,それらは,過去の経験,状況,役割的に複雑であることを明示した。このような人間性を論証するために,人間の生理的基盤からもこれらの特質についてアプローチした。まず,人間を情報処理システムとして取り上げ,その中心は脳にあることを指摘する。制限された合理性については,記憶貯蔵能力の制約,人間の体内,あるいは体外の状況により,異なる価値評価を下す機構,記憶想起の限界,無髄神経やホルモンによる神経伝達により説明される。また目的指向性は,生存というレベルを超えた高次の目的達成において,大脳皮質からの制御が行われることによって支持される。複雑性については,様々な長期記憶とそれを基盤とする思考回路から証明される。このような特質を持つ人間と企業との関係について,両者の目的の適合を基盤として考えた場合,企業は人間観を踏まえて,人間個人の持つ目的と,企業の目的の適合がはかられるように,人間個人のアウトプットを高めるよう働きかけていかなければならない。このアウトプットを高める方法は,能力の獲得と能力の発揮という2つが考えられる。そして,人間資源管理において,人間の目的指向的行動を前提とするならば,企業組織と人間個人の目的が適合するよう,合目的的能力の獲得と発揮を目指さなければならない。
- 1995-02-25
著者
関連論文
- 経営革新のプロセスとマネジメント要因
- 製品イノベーションを誘導する組織プロセス
- 企業個性化度の測定
- マネジメント・イノベーションと組織能力の向上 : 新たな競争優位構築を目指して
- イノベーションの源泉としての学習能力
- 「新時代の企業行動-継続と変化」に関するアンケート
- 競争力の基盤となる雇用と実現に向けた方策(IT革命と企業経営)
- 『未来創造型経営』に関するアンケート調査
- 『戦略経営』に関するアンケート調査
- 『企業変革のマネジメント』に関するアンケート調査(2)
- 山口県発ベンチャー成長の事例研究 : 世界を目指すファーストリテイリング社とプライムゲート社の事例
- 『企業変革のマネジメント』に関するアンケート調査
- 『変革期の経営』に関するアンケート調査
- 脱成熟化に向けた新しいHRM : 雇用保障型個別管理の展開(環境変化と企業経営)
- ものの感じ方
- 「脱成熟化へ向けての経営」に関するアンケート調査
- 「環境不測時代の経営」に関するアンケート調査(2)
- 環境不測時代の人間資源管理 : 今後の方向性
- 「環境不測時代の経営」に関するアンケート調査
- 脱年功化に伴う雇用スタイルの変容と新しい求心力の醸成 : 競争優位の基盤構築に向けた新しい雇用
- 変化の時代における不変のマネジメント
- 「新時代の企業行動 - 継続と変化」に関するアンケート調査 (3)
- 事例報告:株式会社パソナ
- 事例報告:株式会社エヌシーネットワーク
- 専修大学卒業生へのアンケート調査(「経営発展と専修大学」プロジェクト報告)
- 日本におけるスモ-ルビジネスの組織特性(4)店頭登録企業における組織と人事に関する調査
- 学生に勧めたい会社--〔専修大学〕経営学部OBへのアンケート調査をもとにして
- 個人からアプローチする組織変革--組織硬直化要因と硬直からの脱却 (十川廣國教授退任記念号 [慶應義塾大学]商学部創立50周年記念)
- 定量分析と定性分析の相互補完性
- 日韓中における人事システムの比較とその方向性--個の主体性発揮の視点から
- 企業における人間と人間資源管理の役割
- マネジメント-5-日本的経営の現状と人間資源管理の方向性
- 人間資源管理の新機軸--日本的経営の崩壊と存続
- 人間資源に関する問題領域 : 企業におけるその重要性とシステム的把握(清水龍瑩教授退任記念号)
- 企業における人間の能力 : ホワイトカラーの能力開発に向けて
- 企業の持続的発展能力に関する事例研究 : 4社のヒアリング調査を中心に
- 戦略経営に関する事例研究(4) : TOTO 株式会社
- 戦略経営に関する事例研究(5) : 株式会社生方製作所,株式会社ブリヂストン
- 戦略経営に関する事例研究(2)江崎グリコ株式会社,小林製薬株式会社,株式会社パイロットコーポレーション
- 戦略経営に関する事例研究(1) : グンゼ株式会社とユニチカ株式会社
- 「経営革新のプロセスとマネジメント要因」に関するアンケート調査(3)
- 戦略経営に関する事例研究(3)ライオン株式会社
- 製品イノベーションのためのコラボレーション
- 日本企業におけるイノベーション・プロセスの再検討
- 事業継承に関する事例研究(1)西島株式会社
- 組織の整合性問題に関する一考察--戦略的人的資源管理を発端として