企業における人間の能力 : ホワイトカラーの能力開発に向けて
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概要
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人間行動を有効な方向へと導くための研究は,個人レベルでは主として動機づけに主眼を置いたものが多く,また組織レベルでは人間の管理に焦点が当てられている。従業員の能力が高いことは,企業における個人の望ましい状態の1つであるが,従来この領域の研究は実務的視点での研究が多く,対象となる人間の能力の考察が少ない。そこで特にホワイトカラーを中心にして人間の能力を明らかにし,その開発のための概念的基礎を示すこととしたい。人間の能力は,根源的には生理学的,精神医学的現象である。また成人した人間はその発達過程や一般生活から多くのことを学びとり,その個体差は歴然としている。つまり,ホワイトカラーの能力は生理学的機能である記憶と情動との相互作用の結果であるものの,能力格差はそれらの内容を問題にしている。本論文ではこの内,保有状態としての狭義の能力として,記憶に限定して議論を行った。記憶の内容と狭義の能力の開発を説明するものとして記憶獲得プロセスがあげられる。記憶は主に短期記憶と長期記憶に分類されるが,最近の研究で,後者の中に手続き的記憶が発見された。これは意識的に調べられないノウハウ,スキルといったものである。それにより記憶として多くの能力を説明することができる。実際,企業で必要とされる能力の内,保有能力は全てその根底に記憶が存在すると考えられる。さらに管理能力の構造と人事考課の評価項目も記憶によって説明可能であった。以上の点から,人間の情動的側面も大切な要素ではあるものの,狭義の能力は記憶であり,その開発のために,企業は従業員がより多くの情報を長期記憶に貯蔵できるように心掛けなければならない。
- 慶應義塾大学の論文
- 1993-10-25
著者
関連論文
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