環境不測時代の人間資源管理 : 今後の方向性

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日本企業は今,環境不測の時代にある。この激しく変化する外部環境に適合するために,企業は管理施策を大幅に変更しようとしている。すなわち,終身雇用・年功序列から,雇用保障型個別管理への転換である。雇用の保障は,従業員の不安感を一掃し,能力の獲得・発揮に向けて,効果的な人間資源管理の基盤を形成していくと考えられる。個別管理の第一歩は,個の持つ主体性が表現された目的をより明確にし,明示された企業のビジョンと同調することである。すなわち,従業員に対して企業の理念が個人に受け入れられる形で浸透していく必要がある。次に,個の主体性を尊重した目的の実現のためには,個人の考える幅が与えられ,自由に行われなければならない。個の主体性の開放のためには,権限が委譲されていなければならないのである。更に,一連の行動を継続して行うためには,従業員に対してフィードバックする必要がある。フィードバックを行うためには,個々の評価は不可欠である。個人が主体的に活動した結果はそれぞれ異質なものであるため,脱年功化を進め,個別に評価していかなくてはならない。加えて,新しいことヘチャレンジするためのリスクを回避し,創造性の発揮を促すための失敗を評価するような制度が必要になってくる。以上のような個の主体性を尊重した雇用保障型個別管理の方策について検証するために,1部2部上場製造業に対するアンケート調査に基づいた相関分析を行った。その結果,これらの方策と人間資源管理の目的である個人の能力獲得と発揮との間には,強い線型関係を見いだすことができた。すなわち,個の主体性を尊重した個別管理を行っている企業ほど,個人のパフォーマンスを高めることに成功していると言える。今後,これらの概念の適用範囲を検討するとともに,能力獲得・発揮のプロセスを探究していくことにしたい。
慶應義塾大学の論文
1996-06-25

環境不測時代の人間資源管理 : 今後の方向性

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