ペンとスタンチョン牛床における乳牛の横臥行動
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概要
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牛の横臥または休息について論ぜられることは比較的少ない。この調査では, 比較的自由な横臥姿勢のとれるペンと拘束の程度が大きいと思われるスタンチョン牛床をとり上げ, 横臥・起立行動および横臥姿勢の面から, それら休息場所の居住性を比較検討した。供試牛は, 4頭のホルスタイン種泌乳牛を用いた。牛を夜間のみ同一牛舎内のペンまたはスタンチョン牛床に収容し, 12時間の行動をタイムラプスビデオにより録画した。横臥姿勢の分類は四肢の伸縮程度と頸の後方曲げの有無の組合わせにより表現した。観察時間内の総横臥時間はペンとスタンチョン牛床でそれぞれ602±38分(M±SD;観察時間の83.6%)と535±112分(同74.3%)で, 横臥回数は7.8±1.9回と10.5±3.7回であった。ペンとスタンチョン牛床における横臥時間の最小二乗平均は91.3±4.2分(M±SE)と59.0±3.8分で, その差は顕著であった(p<0.0001)。しかし横臥行動は個体差が大きく, 休息場所の居住性を横臥時間の長短で議論する場合には, 例数をできるだけ多くすることが必要と思われた。時間帯についてみると, 1回の横臥時間は22時から4時までにおいて最も長く, 横臥状態の観察にはこの時間帯が有効であることが示唆された。左右の座り方では, 他の研究と同様, 左座りの時間が有意に長かった。さらに左右の座り方に関して, 横臥一起立一横臥という行動の変化を考慮した場合, 次回の横臥は前回下側になっていた体側とは逆の体側を下にして座ることが多かった。とくに1時間以上の長い横臥の次には逆側に座る割合が顕著に多く, ペンで94%, スタンチョン牛床で81%であった。このことより, 牛は長時間一方の体側を下にして座り続けることが困難なため, 一度立ち上がり次は逆側に座ると考えられた。横臥中の四肢の伸縮程度を比較した場合, スタンチョン牛床では前肢および下側後肢を伸展することが少なかった。上側後肢は四肢の中で最も頻繁にその位置が変わることが観察された。またスタンチョン牛床では上側後肢を側方および後方へ進展することが少なく, わずか前方へ伸ばし, 牛床間にある仕切りの支柱に管または蹄をかけることが多かった。またスタンチョン牛床で横臥中の牛は, 体のバランスを保つため, 背側の支柱に寄りかかる様子が観察され, この支柱の位置が横臥姿勢に微妙な影響を及ぼしていたと思われた。横臥姿勢はペンで132通り, スタンチョン牛床で54通りと実に多様な姿勢が観察された。また横臥中にもさかんに姿勢を変え, ペンでは平均4.2分, スタンチョン牛床では5.0分に1回は肢または体を動かしていた。以上のような牛の横臥行動および横臥姿勢の特徴を充分考慮した研究が, 牛の休息場所を考える上で, 重要になるものと考える。
- 1986-09-25
著者
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