近年の三陸の越喜来湾におけるDinophysis fortii(Dinophyceae)の出現と環境要因について
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概要
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1995〜1999年に,三陸海岸の越喜来湾において下痢性貝毒原因渦鞭毛藻Dinophysis fortiiの出現調査を行った。本種の主な出現は5月下旬〜6月上旬の間に始まり,6月下旬〜7月上旬まで続いた。水温や塩分,栄養塩環境から,沖合水の湾内への流入がD.fortiiの最初の高密度な出現のキーとなっていることが示唆された。越喜来湾の北部の大槌湾における水温の連続記録から,この沖合水の流入は内部潮汐波によると考えられた。湾内におけるD.fortiiの最初の出現ピークは,ラン藻やクリプト藻などのフィコビリンを含む微細藻とほぼ同調していた。また,1995年と1996年にD.fortiiの細胞内フィコビリンのin vivo蛍光量を測定した結果,これらのラン藻やクリプト藻の多い時期に出現するD.fortii細胞のフィコビリン量は,そうでない時期の細胞に比べて多い傾向にあった。以上の結果は,D.fortiiがフィコビリンをクリプト藻などの微細藻を取り込むことによって得ているという仮説を支持するものと考えられる。D.fortiiは,NH_4-N濃度の高い内湾的水塊にもしばしば出現した。本種が混合栄養性であるという報告もあることから,NH_4-N濃度が上昇するような従属栄養的な湾内環境によってもD.fortiiの増殖が促進されていると考えられる。
- 日本海洋学会の論文
- 2002-03-05
著者
-
高木 稔
岩手県水産技術センター
-
乙部 弘隆
東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター
-
石丸 隆
Department Of Ocean Sciences Tokyo University Of Marine Science And Technology
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