群遅延スペクトルの帯域幅の違いが零位相音と非零位相音の知覚に与える影響

概要

論文の詳細を見る
短時間位相の違いによる音色の変化について検討した.振幅特性が平坦で, 位相特性が, 群遅延領域の特定の帯域のみに値を持つような刺激音を用い, 刺激音の群遅延の値によって音色判断にどのような影響があるかを調べた.まず, 群遅延の中心周波数と帯域幅を固定させて, 群遅延のピーク値を変化させたときに, 刺激音の類似度の変化を調べた.群遅延の帯域幅は, 聴覚フィルタの等価的な帯域幅であるERBを用いて決定した.その結果, 中心周波数が1000Hzの場合と4000Hzの場合について, 群遅延の中心周波数や帯域幅に関わらず, 群遅延の値が-1msから2ms程度の刺激音は, 零位相であると判断されることが分かった.また, 群遅延の帯域幅が1ERBよりも小さい場合には, 群遅延の中心周波数に関わらず, 群遅延の値が-8ms以下もしくは10ms以上であれば, 刺激音どうしは互いに似ていると判断される傾向にあることが分かった.これは, 群遅延の帯域幅が1ERBよりも小さい場合には, 非零位相の刺激音どうしの類似度が高いことを示している.さらに, 群遅延の帯域幅が1ERBよりも大きくなるにつれ, 非零位相の刺激音どうしの類似度が低下することも分かった.
2000-05-12