擬似能動的多重化におけるレスポンスタイムの短縮方法
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概要
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分散アプリケーションは、複数のオブジェクトの協調によって実現されている。ここでは、クライアントサーバ型の通信が用いられることが多い。フォールトトレランスを実現するために、サーバオブジェクトを複製し、複数の異なるコンピュータに配置する方法が用いられている。多重化の方法のうち、複製されたサーバオブジェクト(レプリカ)がすべて動作する能動的多重化法では、各レプリカがクライアントオブジェクトから送信された要求メッセージを同一順序で処理し、応答を返す。この方法は、すべてのレプリカが同じ性能のコンピュータに配置され、これらのコンピュータが同一のネットワークに接続されているような均質な環境ではうまく機能する。しかし、現在のネットワーク環境は、プロセッサの処理速度が異なるコンピュータが、広域のネットワークに接続される非均質な環境である。このような環境下では、レプリカは性能の異なるプロセッサを持つコンピュータに配置され、これらのコンピュータが異なるネットワークに接続されることが通常である。その結果、クライアントへの応答時間はレプリカごとに異なることになる。能動的多重化では、クライアントオブジェクトがすべてのレプリカから応答メッセージを受け取ってはじめてその応答を受理することができる。これによって、レプリカの同期が実現し、レプリカに障害が発生した場合でも回復のための時間オーバヘッドをほとんど要しないという利点が得られているところが、クライアントオブジェクトへの応答時間は、最後に受信される応答メッセージの到着時間によって決定されることから、レスポンスタイムが大きくなるという問題がある。本論文では、クライアントオブジェクトが最初の応答を受けた時点でそれを受理することによってレスポンスタイムを短縮する擬似能動的多重化を提案する。擬似能動的多重化の非同期性によって生じる回復時間の増大については、クライアントオブジェクトからの要求を処理しながら、1)速いレプリカと遅いレプリカを判別し、2)遅いレプリカは実行する必要のない要求を処理しないことにより、速いレプリカに追い着く機構を導入することによって解決する。また、要求を処理した結果がその処理順序に依存しないものについては、各レプリカができるだけ異なる順序で処理することにより、レスポンスタイムの短縮を図る。各レプリカは処理順序を決定するためにメッセージをやりとりすることはせず、クライアントオブジェクトとの間の伝達遅延を測定し、より近いクライアントオブジェクトからの要求を先に処理する方法を用いる。本論文の提案するプロトコルは、全順序プロトコルの制御メッセージにいくつかの情報を加えるだけで実現することができ、メッセージ数を増やすことなく実現される。
- 社団法人情報処理学会の論文
- 1999-11-18
著者
-
滝沢 誠
東京電機大学理工学研究科情報システム工学専攻
-
滝沢 誠
東京電機大学理工学部
-
滝沢 誠
東京電機大学
-
桧垣 博章
東京電機大学理工学部情報システムエ学科
-
田中 勝也
東京電機大学理工学部情報システム工学科
-
桧垣 博章
東京電機大学
-
根本 直一
東京電機大学理工学部情報システム工学科
-
田中 勝也
東京電機大学理工学部:(現)株式会社フェイスライセンスビジネス部
-
桧垣 博章
東京電機大 大学院未来科学研究科
-
滝沢 誠
東京電機大学理工学部経営工学科
-
TAKIZAWA Makoto
Department of Physics, Sophia University
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