高濃度塩存在下におけるアルコール醗酵酵母のGlycerolおよび2,3-butanediolの生成機構

概要

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培地中に高濃度の塩 (0.5〜1.0 M NaCl) が存在す場合, 酵母菌体内ATPレベルの低下が起り, その結果, α-glycerophosphate dehydrogenaseのATPによる阻害が解除され, 一方この酵素の生成量も増大し, したがって, dihydroxyacetonephosphate→α-glycerophosphate→glycerolの反応が促進される. このα-glycerophosphate dehydrogenaseの反応はNADHを必要とするが, そのNADHはglyceralde-hyde 3-phosphate→1,3-diphosphoglycerateの反応によって供給される. このglyceraldehyde 3-phosphate→1,3-diphosphoglycerateの反応によって生ずるNADHは本来acetaldehyde→ethanolの反応に要求されるもので, dihydroxyacetonephosphate→α-glycerophosphateの反応によるNADHの消費によって, 菌体内NADHの不足がもたらされる. この菌体内NADHの不足, ならびにalcohol dehydrogenase活性の低下とによって, pyruvateの一部は酸化還元を伴なわない系でacetoinに変換される. この比較的醗酵の初期に蓄積されたacetoinは, 醗酵の中期から後期になってethanolのacetaldehydeへの酸化で供給されるNADHを消費してほぼ完全に2,3-butanediolに変換される.このように, 高塩培地におけるglycerolの蓄積機構とacetoinから2,3-butanediolへの変換を, 醗酵の全期間にわたるethanolの生成阻害と関連させて明らかにした.
社団法人日本生物工学会の論文
1973-08-25