黒麹amylase : (第4報) 細菌によるamylaseの失活
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概要
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黒麹菌Aspergillus awamori var. Kawachiをjar fermentorを使用して液体培養し, amylase生産を行なう場合, 時として細菌汚染がおこり, 一度生産されたamylaseの活性が急激に低下した. その原因を追求した結果, amylaseが細菌cell wallに吸着され, 吸着された状態では酵素活性を示さぬことを見出し, これが細菌によるamylase失活の一つの原因であることを明らかにした. さらにその吸着の性質, 条件について検討した.Amylase は細菌のintact cellには吸着されず, homogenized cell, autolysed cell, およびlysozyme処理により得られたcell memberane fractionに吸着されることから, cell wallの表層部には吸着されず, 内側の部分に吸着されると推察された. またcell wallの吸着能はアルカリ側のリン酸緩衝液で洗滌することにより増加した. それゆえ以後に吸着実験に際しては, ブイヨン培地中で48時間培養の菌体をBraum Cell Homogenizerを用いて破砕し, 0.1Mリン酸緩衝液(pH.8.0)で洗滌したものを用いた.細菌株とこれに吸着されるamylaseの種類との間には特異性が認められた.すなわち E. coli C600は黒麹の糖化型amylase-I (SA-I) だけをpH4.0で, E.coli BはSA-IとTaka-amylase AとをpH4.0で, B. subtilisはRhizopus SAのみをpH2.2で, またRhizopus糖化酵素生産工場で分離された汚染菌の多くはRhizopus SAをpH2.2で吸着した. このamylaseの細菌に対する吸着は, それの基質である生澱粉粒に対する吸着とは異なり, せまいpH域で, しかも細菌とamylaseとの種類による特異性がみられるところに特徴がある.吸着された状態のamylaseは酵素活性を全く示さないが, pHの変化やイオン強度の増加により, 溶液中に再び遊離した. これは吸着の可逆性を示している. 吸着能は cell wall fraction をpH10.0以上の0.1Mリン酸緩衝液で洗滌すること, 熱処理すること, あるいは bacterial protease処理することによりそれぞれ失活した. このことは吸着部位がタンパク質であることを示している. さらに通風乾燥(35℃)や凍結乾燥によっても吸着能が失われた. 以上のことからamylaseの吸着部位はcell wallの内部のタンパク質, おそらくcell membraneであり, 吸着にはそのmembrane上の吸着部位に高次構造が要求されると考えられる.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1969-12-25
著者
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林田 晋策
九州大学農学部農芸化学科
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本江 元吉
熊本工業大学微生物工学科
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本江 元吉
九州大学農学部農芸化学科
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内田 奉典
九州大学農学部, 醗酵学教室
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本江 元吉
九州大学農学部発酵学教室
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林田 晋策
九州大学農学部
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内田 奉典
九州大学農学部 醗酵学教室
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