Rhizosphaera kalkhoffii BUBAKによるマツのすす葉枯病 : 病原菌の生活史, 生理的性質および病原性
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概要
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1965年の大発生以来, マツ類の新病害として多くの人の関心を集めたマツのすす葉枯病について, 病徴, 病原菌Rhizosphaera kalkhoffii BUB.の生活史, 生理的性質, 病原性を調べた。初期の病徴は5月下旬頃, 伸びはじめたばかりの新梢に認められる。感染を受けた針葉は気孔周辺から変色をはじめ, やがて針葉の1/3〜2/3が黄色く枯れる。発病後約10日を経過すると, 変色部分の表裏気孔列上にすす状の小黒点が多数認められる。これは本菌の柄子殼である。黄変部分はその後赤褐色になり健全部との間にめいりょうな境を作り病状が進まなくなる。柄子殼は柄胞子とともにほぼ一年中被害葉上に認められたが, 柄子殼および柄胞子形成は5〜7月および9〜10月に盛期を持つ。本菌の完全時代は, 被害葉上および供試した数種の培地上においても全く認められなかった。本菌の越冬は, り病針葉上に残存する柄子殼, 柄胞子および針葉の組織中にある菌糸によると思われる。柄胞子は発芽に際して, 芽生増殖を行なうもの(出芽型)と発芽管を伸ばすもの(発芽管型)が認められ, 酸性側では発芽管型の, また中性〜アルカリ側では出芽型の発芽が多かった。柄胞子の発芽は素寒天培地上5〜30℃で認められ, 25℃, pH4.6においては, 両発芽型を合計すると, 発芽率は98%に達した。菌糸の生長は0〜30℃で認められ, 最適温度は25℃。ジャガイモせん汁, アカマツ針葉せん汁およびWAKSMAM氏液で本菌の生長は良好であったがRICHARDS氏液では著しく不良だった。RICHARDS氏液にチアミンを添加した培養液では生長量が著しく増加した。温度, 水素イオン濃度, 培地の種類を問わず, 生育した菌そうには多量の分生胞子が生産される。宿主上でも培地上でも, 本菌は分生子柄をつくらず直接出芽によって分生胞子を増殖することが大きな特徴である。培地上に形成された分生胞子をもちい, 7回にわたる接種試験をした結果, 気孔周辺に白緑色〜褐色の小斑点の形成を認めたが, その後病変の進展がほとんど認められなかったことから, 本菌は侵入はするが針葉組織内での進展が行なわれないものと考えられ, 健全に生育しているマツに対する本菌の病原性はきわめて弱いものと思われる。
- 日本森林学会の論文
- 1971-09-25
著者
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