蛋白合成阻害剤である抗生物質がタバコモザイクウイルスの増殖および宿主の代謝に及ぼす影響
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概要
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プラスサイジン S (BcS) とピューロマイシン (PM) は菌類や高等生物の 8OS リポソームでの蛋白合成を阻害する抗生物質である。これらは TMV のタバコ葉内での増殖を阻害する。一方, クロラムフェニコル (CM) は細菌のリポソーム (70S) での蛋白合成を阻害するが, TMV の増殖は阻害しない。これらの抗生物質を作用させて生じたウイルスは, 無処理下で生じたウイルスと比較して, 単位濃度あたり同じ感染性をもっていた。BcS や PM はタバコ葉の細胞質蛋白へのロイシンのとりこみを阻害したが, CM はそれを阻害しなかった。CM はタバコ葉のクロロフィルの分解な BcS や PM よりもはげしく促進した。14CO 2 のタバコ葉へのとりこみは CM で強く阻害されたが, BcS や PM では阻害されなかった。14 C-アミノ酸を細胞質を通じて, また 14CO 2 を葉緑体を通じて, それぞれ TMV へとりこませると, BcS や PM 処理では, ウイルス量の減少と比例してとりこみ量も低下した。しかし CM 処理では, ウイルス量は無処理と変らないままで, 14C-アミノ酸のとりこみは明暗所下ともに促進され, 14CO 2 のとりこみ量はいちじるしく阻書された。後者のとりこみは TMV の蛋白へのとりこみが圧倒的である。そこで同じアミノ酸でも, 葉緑体を通じて TMV へ入る量は CM で強く阻書されることになる。以上の事実から, TMV はタバコ葉の細胞質 (80S リポソーム) で増殖することが推定され, また TMV の増殖に対する光合成機能の役割についても論義された。
- 日本植物病理学会の論文
- 1969-12-30
著者
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