進行卵巣癌治療における術前化学療法と術後化学療法の比較
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概要
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Cytoreductive surgery後のadjuvant chemotherapyは長い歴史をもつ標準の治療方式であるが,その多くは有効率において劣るalkylating agentsを含む併用療法であつた. 現在, cisplatinを含む併用療法は,とくに頻度の高いserous adenocarcinomaについては80%を超える高い有効率を示す. このような現況ではcisplatinを含む併用療法を導入療法として用い,化学療法に感受性を有する細胞集団を充分に攻撃し,残存する主に化学療法に抵抗性の細胞集団を手術的に摘出する方式,すなわち, Neo-adjuvant chemotherapy後のaggressive surgeryが理論的にも,また,実際面からも優れている可能性があると考えるに到つた. まず,薬剤の組織移行性に及ぼす支配血管の重要性を調べるため,子宮,卵巣の支配血管を一時的にクランプし, Latamoxef, carboplatinを投与し, クランプ解除前後におけるtarget tissueへの薬剤移行性の変化を求めたところ, クランプ解除により約2倍程度の増加が認められた. 次に,術後2年以上経過した, III, IV期症例を対象として,術前化療27例,術後化療10例について化療有効率,手術摘出率,予後の比較を行つた. その結果,すべての項目において術前化療の優位性を認めた. しかし,予後に関しては,期待していた程の差は得られず,その主因は化療有効例での第2回開腹時における手術の非徹底性, とくにリンパ節廓清にあると考えられた. Neo-adjuvant chemotherapy 後のaggressive surgeryは,1. 最も信頼しうるin vivoでの感受性試験であること. 2. あるがままの血流温存により,有効率の上昇が期待されること. 3. 有効例では手術摘出率が著しく改善されること.などの点からすでにcisplatinを含む併用療法によつて高い有効率の得られている睾丸腫瘍,頭頚部癌と同様に卵巣癌においても標準の治療方式となるべきであると考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-06-01
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