広汎性子宮全剔出術における手術直前血液希釈法の検討
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概要
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優れた治癒能力をもつ広汎術式の難点はその障害面にある.その障害中,今迄殆どとりあげられなかった輸血後肝炎の防止を目的として本研究を行つた.輸血後肝炎はHBs抗原,トランスアミナーゼ値検索の行われている現在でも15%程度に発生している.それはこの肝炎の大部分がnon A,non B型のものであるから当然とも云える.対象は本院で子宮頚癌にて広汎手術を行つた連続27例でその中21例に本法を行いえて,輸血を要しなかった.その実際は全麻後,末梢静脈より平均800mlを約40分問で脱血し,同時に他側よりSaviosol(ミドリ十字)(3% dextran 40,in lactate-Ringel pH 8)1,000mlを注入し,術中はこの希釈血で循環を維持し,止血操作に入ってからもどし輸血を開始するものである.本法を行つた21例と輸血を行つた連続50例とを対比してその評価を行つた.本法群では,出血量,手術時間,術中尿量,ドレーン排液量は各々平均,960g,157分,350ml,160mlであり,対照の輸血群では各々,930g,164分,150ml,280mlであった.このように術中尿量を除いては両群間に全く差を認めない.術中の循環状態も正常で,出血傾向も出現していない.実測出血量は960gであるが,これは希釈血のもので,真の出血量は719mlであった.術後の合併症も差がなく,ただ輸血群で6例(12%)に肝障害の発生を認めた.従来の方法と比べての利点は,(1)手術開始時にnormovolemicである事,(2)もどし血は酸素運搬能も止血能も正常である事,(3)術中管理は容易で,低血圧麻酔のような麻酔専門医を要しない為,どこででも安全に行いうる点である.本法の適応は術前検査において心,肺,肝機能に異常がない事,Ht35%,Hb10-11g/dl以上である事である.広汎手術は,本法の最もよい適応手術と云えよう.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-07-01
著者
-
平林 光司
国立福山病院産婦人科
-
岡田 悦子
国立福山病院産婦人科
-
平林 光司
国立福山病院
-
中妻 嘉夫
国立福山病院
-
川田 昭徳
国立福山病院産婦人科
-
白河 尚子
国立福山病院産婦人科
-
林 耀庭
国立福山病院産婦人科
-
林 耀庭
岡山大
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